第79話 朝、寝ていたいから・・・

定時制高校に行きたい。


そんな声が、自由の森に出回った。

ときは、1985年。

かの中学生たちは、なぜまたそんなことを言い出すのか?

担当かどうかはともあれ、誰か職員が尋ねたみたいである。


朝、寝とけるから。


確かに、定時制高校というのは夕方から授業がある。

だから、朝から仕事にもいかなければ、寝ておけるわな。

普通科高校に落ちた少年は今ごろ、そんな生活状況に。

誰もいなければ、寝ているか、自分で勉強しているか。


それにしても、わかりやすい「ズル」ができそうな構図。

しかも、違法というわけでもないからな。

だけど、それされちゃあ、担当職員が休憩できんじゃん。


一方のかの少年は、高校などあてにもしていない。

自ら3年後に大学に行く手法を見つけていたから。


調べもせずに分かった口を利く保母、しょせん弾除け要員。

なだめすかして、この少年をうまいことこちらの思惑で・・・。

そんな浅はかな手法は、後に彼より大批判を浴びる要因となった。

彼の大批判、あたかも、ボクサーに殴られるサンドバックの如し。


弾除け要員のネエチャンは、その年度で退職して高跳び。

後は野となれ山となれ、ってか?

だが、酒も飲まずに理想に酔える幹部職員は、ここに「商機」を見た。

そうか、定時制高校なら、低学力の子らも押し込める!

これで、本園自由の森の高校進学実績もできるし、一石二鳥!

落ちこぼれにも温かい目を向けた処置ができるではないか。

定時制高校に行けば、朝寝ておけるって?

朝寝ておかれても、構わん。どうせ私は勤務時間だ。


朝寝ておけるから、定時制高校に行きたい。

そんなことを言った少年たちは、結局全日制高校に進学。

勉強できる環境を与えられない代わりに、

理想泥酔者は、仲間ごっこを与えようとした。

無論それは、元少年によって歯牙にもかけられなかった。

結果的にその手法は、元少年より評定不能を宣告された。


残念だったな。

ってか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る