第56話 人がいないと寂しい?

かの作家を数カ月だけ担当した保母が、こんなことを言った。

彼女と同学年になる元児童の男性が、高校を出て就職した。

それと同時に、街中で一人暮らしを始めた。

彼女の話では、こうだ。


家に帰っても、誰もいないから寂しいと言っていた。


それを聞いた、彼らより一回り下の後の作家氏は、こう思ったらしい。

その人には通用したか知らないが、わしには通用しない。


必要以上に群れさせて一人になる恐怖を味わわせるような、

そんな指導しか、おまえらはできていなかっただろうが!

社会に出ればいやでも独り立ちせねばならんのだ。

おまえら職員は、群れさせるだけの所業しかできていなかっただろう。

そんなものは、わしには一切通用しないからな。


かの卒園生はその後、自由の森に勤めていた同学年の栄養士と結婚された。

一方の作家氏は、その後も独身のまま、現在に至っている。


かの作家氏は、吐き捨てるように言ったそうな。

大体、寂しいだろうからと言って群れさせたところで、

ろくなことがないからな。

それで寂しさが紛れるとか、そんなものは気休めに過ぎん。

孤独と向き合い、自らの足で進んでいかねばならんのだ。

くだらん群れ合いをさせても、そんなものはしょせんその場限り。

当時のおまえらの対応は、その場限りのものに過ぎなかったのだ。


そう言って、その頃の関係者を一刀両断に切り捨てた。

そして今も、彼は自らの道をひたすら進んでいる。

もう、彼を止めることなどできない。


テメエらの浅はかな群れあいが通用しなくて、残念だったな。

ってか?

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