第26話 G氏の怒り

かの作家氏の1学年下に、G君という少年がいた。

その苗字は、父方のものであった。

だがあるときから、彼はNという苗字を名乗った。

否、名乗らされたというべきか。

再婚した母親の旧姓、もしくはその配偶者の苗字のいずれか。


彼は、数年来はおとなしくしていた。

そして、高校にも進学した。定時制の商業高校であった。

かの理想泥酔者は、N家を云々と、家族を大事にしろと述べ続けた。

G君には妹と父親違いの弟もいた。


だが、かの理想泥酔者の意図は完膚なきまでに通用しなかった。

G君は、自由の森と一切の縁を切ると宣言して退所していった。

程なく、苗字をGに戻した。

そして、母親とも兄弟とも、一切の縁を切った。

自由の森は、言うまでもない。


作家氏は、今でも街中でしばしばG氏に会う。

そのたびに、自由の森の話題になる。

理想に酔っていたあの男性職員を、彼は心底許していない。

G氏の総括は、この一言に集約される。


「ありゃあ一言、無能だったな。ま、どうせクビだろう」


かの元職員氏の名誉のために申上げておく。

現実には「クビ」という形の退職をされたわけではない。

だが、G氏の意識においては、その限りではないことは明白である。

残念だろうが何だろうが、それが現実というものである。

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