第15話 孤独なもの

人がいれば、誰かがいれば、

ただそれだけでも、気はまぎれるもの。

最低でも、気休めくらいにはなる。

確かに、その場限りの慰安くらいは得られよう。

ま、都市貧困者相手の配給の珈琲とサンドイッチみたいなものよ。

~ この例え、ちょっとアメリカ風だね(苦笑)。


しかしながら、そんなものは目クラマシ程度のものに過ぎない。

これから上り詰めていかねばならぬ者にとっても、

トップとしてその組織を率いている者にとっても。


幹部職員として自由の森という「会社」に勤めている彼らには、

そのことが本当に肌身でわかっていたのだろうか。

後者についてはともかく、せめて前者たる彼には、

何とか、気休めでも味わって一息ついてくれれば。

家庭、地域の仲間とともに生きていく人生こそが素晴らしいのに。


そんな思いともつかぬものは、しかしながら、彼には通用しない。

群れて人間を標榜していれば何とかなる程度にしか思いの至らぬ、

無能職員というレッテルをすでに貼られているのではないか。


彼にはもはや、自分たち程度の考える幸福像は何の役にも立たない。

彼もまた、この「会社」のトップ同様、否、それ以上に、

孤独を強いられる仕事に入っていくのであろう。


彼に対して、自分などに出る幕は、もはや、ない。

ってことか・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る