第2話 人を見て法を説けぬ者の末路

彼はその地に滑り込み、晴れて、自由の身となった。


家庭とか共同生活とか、そういったものに夢や理想を持つ理想泥酔者。

彼は、言った。


「この下宿も、ある意味『共同生活』だからな」


彼の唱える「共同生活」を全否定されたことによる辛さもあったのか。

それとも、彼の進む大学がかの職員の出身大学の近くの国立大学だからか。

理想泥酔者はこのとき、相当の悪酔いにさいなまれていたように思われた。

だが、この人物が如何に悪酔いしていようと、彼にはまさに馬耳東風。


ま、ホザけ。思想の自由だからな。


かの人物の酒も飲まずのあの悪酔い、その後もしばらく続いたようだが、

3年目にもなると、徐々に、相手にされなくなった。


この人物と話しても時間の無駄。

当事者能力など、どうせ、ない。

何かを得られる要素さえ見受けられない。


幸か不幸か、彼の母方の親族と連絡が取れていたのである。

かの者をして彼を社会的不具者にする目論見は、破綻していた。

その元を作った岡山県という官庁を、彼は決して許すことは、ない。

ましてこの県を「故郷」などと情緒的な言葉で評すことなど、あり得ない。


有能にして百戦錬磨に見えた、都の西北出身の選挙のプロも、

かの元「孤児」の怒りの真意を、今生でついに理解できぬまま、世を去った。

かの人物の故郷の市の市議会議員選に立候補させようとしたようだが、

そんな目論見は、いつの間にやら雲中霧散していた。


結婚を通して彼に所帯を持たせようと企図した者も、少なからずいた。

男女を問わず、そのような目論見を企図した者は皆、

彼の反撃による返り血を浴びせつけられた。

ガキの火遊びをやめさせて、そのガキをボコボコにするがごとく。

その過程で田舎町の一つや二つが叩き潰されなかったのは、不幸中の幸か。


理想泥酔者をして彼に与えようとしたモノは、

彼をして新たな犠牲者を出す土壌を育成していたのである。


人を見て法を説けぬ者の末路、かくありなん。

ってか?


・・・・・・・ ・・・・・ ・

バトン引継ぎ中

https://kakuyomu.jp/works/16817330655162797754/episodes/16818093074629897832

↑ 第368話 悪夢去りし街角より


昨年度版は、明日をもって完結いたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る