花びら色の春・自由の森を旅立とう!~昭和最終年のピリオドから
第1話 かつて過ごした住宅地の下宿から
彼は、ようやくたどり着いた。
かつて通っていた小学校区のある地に。
京都の吉田山へと旅立ったかつての同級生と入れ違いに、
ようやく彼は、かの地に戻って来れた。
とにかく、飯を食うための費用を生み出す場所は確保できた。
二部学生だったことが、幸いした。
いちいち不愉快な話は、これからも続く。
だが、丘の上のあの地にはもう、住む必要はない。
同じような環境のまま、その場限りの対応をされてもかなわぬ。
とにもかくにも、彼は、自由を得られたのである。
この自由、彼はどれほど渇望したことか。
自由の森の職員らは、そのことに気付いていたのだろうか?
とにもかくにも、最低限度の自由は確保した。
かの理想に酩酊した職員は、気付いていたのか?
彼がどれほど自由を渇望していたかを。
恐らく彼らは、この期に及んでなお、
自分たちの情緒に訴える言動が通用すると思っていたのかもしれぬ。
それは、その後しばらくの理想泥酔者の言動を見れば明らかだった。
入所児童の法的な権利や退所にあたって与えられるものの法的根拠よりも、
家族だの家庭(そう、結果より過程?!~誤植を活かしたぞ)だの、
そんな情緒べったりの言葉のほうが彼にとって利益になるのではないかと、
このときはまだ、本気で思っていたのかもしれない。
だが、それはとてつもなく浅はかな勘違いであった。
って、な。
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