25 天体議会 プラネット・ブルー(長野まゆみ)

 天体議会 プラネット・ブルー/長野まゆみ/河出文庫、207ページ



 銅貨と水蓮という二人の少年を軸に、近未来的だけれど不思議なレトロさが漂う美しい世界が描かれる物語。

 ノスタルジックで、透明感に溢れた世界に浸れる一冊です。


 長野まゆみ作品は高校時代に友人だった子に猛烈に推されて、当時何作も読みました。この作品は初めに読んだのですが、結果的に作品群の中でも特に好きなものとなりました。

 ときどき作品の中にある戦争のエピソードがないのと(大事なこととは思うけれど心には重いものがあるので)、耽美色が強すぎないくらいの作品が、私には自然に馴染みやすいという点があったのかもしれません。


 風景は何処までも美しく、少年たちもきらめくように美しく伸びやかで、何もかもに透明感がある世界です。

 物語自体は、大事件が起こるということもなく、少年たちを取り巻く環境の移り変わりや、彼らの心の有り様などを丁寧に綴ったものという感じ。


 登場人物たちのネーミングも独特のセンスがあって素敵です。

 独特の言葉選びや、星や鉱石への造詣に心ときめきます。


 文庫版も単行本版も、装丁がまた良い雰囲気のものなのです。書影を見てお好みの方を選ぶのが良いかもしれません。

 素敵で美しい世界への始発駅となる一冊です。

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