05 やわらかなレタス(江國香織)

 やわらかなレタス/江國香織/文春文庫、212ページ


 やわらかで、のびのびと、時折戸惑いながら語られる著者の言葉。

 江國香織の食にまつわるこのエッセイ集は、独特の語りが際立っている作品だと思います。


 ぐるぐると考え出して、行っては戻ることの多い文章には、すこしもどかしいような気持ちにさせられます。

 決して温度や熱が高いように感じられるわけではない文体だと思うけれど、彼女なりの視点でじっくり食べ物とそれに関わる事柄をみつめているのが印象に残ります。この方はよく物事をみつめているのだなと思います。

 それだけに時折、はっと共感させられることがあると、心をつかまれた気持ちになるのです。


 なんだかひとつの物語を読んでいるような感覚になり、とても不思議です。

 それこそが小説家江國香織らしさ、なのかもしれません。

 表題も私の中の江國香織像と一致しています。


 このなかでは、「最近の至福」と「薔薇と蒲焼」が好きでした。さすらいのウェイターも良かったです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る