03 夜中にジャムを煮る(平松洋子)

 夜中にジャムを煮る/平松洋子/新潮文庫、276ページ



 この作品の何が好きって、とにかくタイトルが秀逸だと思うのです。

 見た瞬間、琴線に触れて、手に取っていました。

 夜中にジャムを煮る。

 この一文の中には、あまりにいろんなものが詰まっている、気がします。

 夜中にジャムを煮る。

 声に出して読みたいです。


 本書には、表題作含む数本のエッセイ(旅日記含む)が収録されています。エッセイ中で触れられた献立などに関する写真も複数掲載されていて、目にも楽しい本になっています。


 エッセイの中では表題作がもっとも好みでした。自分のって信じた方がいいですね。今回は的中です。

 夜の静寂のなかでひっそりと何かに専念する楽しみ、あると思います。それって、たとえば夜中にジャムを煮るようなことなのかなって。


 郷愁と食事への情熱が程よいバランスで書かれた文章で、とても読みやすかったです。

 平松洋子のエッセイを読むと、なんだか元気が出る気がします。どこか懐かしくも、パワフルで明るい雰囲気に満ちているからでしょうか。

 私はせいろ蒸しや鍋でごはんを炊く境地にはまだまだ至れませんし、何かと電子レンジを手放せない人間なのですが、いつがこんなふうにやってみたい!という気持ちにさせてくれる本です。

 食の楽しみに改めて思いを馳せる一冊でした。

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