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このところ古い映画ばかり見ている

なんだか落ち着くんだ

出てくる人たちはみんなとっくに死んでいて

そう思うと誰のことも許せる気がする


この人たちは肉体をなくし

光と影のゆらめきだけが残った

フィルムに焼きつけられたその跡は

決められた動きを永遠にくりかえす

善人も悪人もみな

オルゴールに合わせて踊る人形たちのよう


「人生」という物語は存在しない

残るのは無言のダンスだけ

おかしくて笑う人がいる

怒って腕を振り上げる人がいる

しかしどの表情も意味をなくし

水たまりの上のさざ波のように

何の痕跡も残さず消えていく


彼らのたったひとりの生き残りを

ずいぶん前に見かけたことがある

映画の中では美しい女性だったその人は

耳の遠い小さな老婆になっていた

変わり果てたその人に気づけたのは

おもかげがあったからではなく

僕と同じものを見ているように感じたから


老婆は周りの様子を何も見ていなかった

街並みも 通りかかる人々のことも

彼女が見ていたのはあの映画だけ

もう死んでしまった人々の幻を

僕と彼女は一緒に見ていた

老婆は僕の存在に気づきもしなかった

映画館の客同士のように

それでいいと僕は思った


死人たちの幻を見つめる時間は

祈りに似ている

映画館での二時間ほどのあいだ

僕たちは祈りを捧げる

もういない者たちのために

もう存在しない風景のために

気がつくとどこでもない場所にいて

孤独の中で

僕はすっかり安心している

すべての人は死ぬ

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