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何も考えるな

ただ動け

できるだけ素早く

限界を超えて素早く動け


すべての心を置き去りにしろ

痛みも苦しみも

嫉妬も怒りも欲望も


心よりも素早く動くこと

そんなスピードでは

すぐに追いつかれるぞ


二十四時間走り続けろ

眠っているときも止まらず眠れ

楽になれるときがくると思うな

お前は永遠そうなのだ

切れ目無しに苦しみつづけるのだ


ゴールなど無いのだ

ガラス窓に何度もぶつかる蠅のように

どこにも行けずにのたうち回るのだ

自分の力でどこかに行けるなどと思い違いをするな

その時が来るまで

お前はどこにも行けないのだ


心臓が破れても走れ

破れるときは破れるのだ

砕けるときは砕けるのだ

死ぬときは死ぬのだ

それはお前が決めることではない

お前の思考も計画もすべて窓から捨ててしまえ


その時がいつ来るかなど期待するな

その時が来る保証など無いのだ

来るときは来るのだ

来ないときは来ないのだ

来たとしても来たとわからないのだ

くだらないことは考えるな

立派なことも考えるな

お前はただの肉体だ

肉と骨の塊だ


お前は蠅となんら変わるところがない

無我夢中に飛び回れ

窓にぶつかり血だらけになっても

痛みを感じず飛び回れ

痛みなど感じている暇はないのだ


お前の死を誰も悲しまない

誰もお前の葬式に来ない

お前はひとりぼっちで死んでいくのだ

蠅がひとりぼっちで死んでいくように


痙攣していた肉の塊が

今は冷たくこわばっている

ただそれだけのこと

それ以上の意味はない

墓も戒名も捨ててしまえ


お前は生きることを厭うか

お前は死ぬことを恐れるか

それでいい

それ以外にない

お前の居場所はどこにもない

お前は永遠に眠ることができない


そんな顔をするな

顔なんぞ捨ててしまえ

能面をかぶれ

そして捨てろ

悲しいときに悲しい顔をするな

うれしいときにうれしい顔をするな

誰もお前の顔なんぞ見ていない

誰かが見てくれると期待するな

お前はひとりぼっちなのだ

蠅のように


蠅に顔があるか

蠅は能面よりも能面だ

蠅になれ

ぶんぶん飛び回れ

ぶんぶんとだ


お前の家族は皆殺しだ

お前の友は皆殺しだ

お前の恋人は皆殺しだ

初恋相手も結婚相手もすべて殺す


そんな顔をするな

すべては肉なのだ

肉から血が流れているだけだ

肉を食べろ 血を飲め

小便をしろ 大便にまみれろ


誰も愛するな

誰にも愛されるな

蠅のように

ひとりぼっちで生きろ

ひとりぼっちで死ね

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