第21話~ 思い出さがし ~

長岡は宮城県に留まり桔梗丸の痕跡を捜し歩いた。

江島で漁業の手伝いをしながら。毎日、毎日…往きていた。

しかし、桔梗丸の船員達を調べようとしたが、出身地さえも詳しく知らなかった。

(確か、九鬼さんは三重県出身、福士さんは北海道出身、中村さんは青森県出身だったかな?あーぁ。)それ以外は何も知らなかった。


仙台市の街中で軍人だった人に声をかけまくったが、誰一人として桔梗丸を知っている人間はいなかった。

故郷のこと。と言うか。玉のことが気になっていたが、桔梗丸のことが頭から離れない。

それに、何故、九鬼船頭は俺だけを生かせてくれたのか。わからない。

桔梗丸の投降命令に海軍の岩瀬少佐が来て九鬼船頭と二人で話していたが、もしかすると、何かを知ってるかも。岩瀬少佐を捜すしかない。

それから岩瀬少佐を捜してから5年が過ぎて行った。

その間の生活費はカバンに入ってた沢山の百円札を使えばよかったが、桔梗丸の(死んでいった)皆んなのことを考えると使えなかった。

江島で漁業をしている老人と知り合い、その手伝いで生活費は何とかなり、5年の間に少しお金がたまり、遠路の東京へ出て彼(岩瀬少佐)を捜しに行くことが出来た。

その日もあてもなく歩いた。大都会で道行く人に、「海軍にいた岩瀬少佐をご存じありませんか。」と聞いても、都会の人達は復興で忙しく誰も長岡の相手にしてくれる人はいなかった。

1週間が過ぎ、その日も夕暮れ時に新橋辺りをとぼとぼと歩いていた。

ああ今日もダメか。

通りの食い物屋から焼き鳥を焙っている美味しそうな匂いがしてきた。

腹が減っていた長岡は店に入り、徳利酒と焼き鳥を注文した。

常温の酒は三増酒…、はっきり言ってまずかったが、カラカラの喉を潤すには十分だった。

隣のテーブルには髪ぼさぼさ髭ぼうぼうの男が酔いつぶれて寝ていた。

中年のおばさんが、「お客さん起きてくださいな。こっちも商売だから寝てるんだったら帰って。」と言い男の肩を揺らした。

「うるさ~い。呉の衛兵だった俺に、ハァ何だと。ばばあ、知ってるか。俺がいた呉工廠では、戦艦長門や大和、桔梗丸を造ったんだ。」

「長門や大和は知ってるけど、桔梗丸?知らないね。さあさあ、帰んな。」おばさんは全く相手にしなかった。

長岡は、耳を疑った。この男は確かに桔梗丸と言った。

「女将さん、徳利酒1本とおちょこ一つ貰えるかな。」

「はいよ。」

暫くしておばさんが「おまちね。」と言い酒を持ってきた。

長岡は、それを持って隣のテーブルの男に向かい、「お酒いかがですか。」と言った。

男は眠い目を擦りながら、「あんた、だあれだっけ。」

「さっき桔梗丸とおっしゃいましたね。」と長岡は男に酒を差し出した。

「確かに言ったよ。桔梗丸は、世界一素晴らしい最強の輸送船だったんだ。それが何か。」

男は胡散臭さそうに長岡を見た。

「私は桔梗丸の船員でした。」

その言葉で男は急に真顔になり、「へぇー。(沈)没した桔梗丸に生きていた人がいたんだ。さ、さ、前に座ってくれ。俺の名前は、赤羽。酒もらうよ。」

「どうぞ。私は長岡と言います。」

長岡は赤羽のお猪口へ酒を注いだ。

「桔梗丸については、竣工までしか知らないんだ。風の便りで沈没したと聞いているが、どこで、どんな死に方(沈没)だったのか教えてくれ。」

それから、長岡は桔梗丸との出会いの話。大和型戦艦3艘の死に水を取った話。日本国が降伏後、北海道からの輸送船に乗った大勢の民間人を助けようとソ連の潜水艦2隻を沈めた話。(日本)国から投降するよう命令があったが、拒否し(日本)国から攻撃されたことを赤羽に語った。

「私は桔梗丸の最後は見ていないのです。その頃、宮城県の江島と言う小島で寝ていて、遠くから聞こえる轟音で目が覚めたら、この巻物が置いてあったのです。」

長岡は赤羽へ巻物を手渡した。

巻物を読み終え、「九鬼大佐…。」赤羽は顔を上げて雫が落ちるのをこらえていた。

「長岡さん。何か知りたいのでは?。」

「九鬼大佐は、何故、私を残すのを選んだのかが知りたいのです。桔梗丸の投降協議について、(日本)国から岩瀬少佐、青木少尉、長瀬少尉が乗船したのですが、帰られる頃に岩瀬少佐が九鬼大佐と二人で話されていました。岩瀬少佐は何かご存知ではないかと…。」

「岩瀬少佐のことはお名前は知ってはいますがお会いしたこともないので、今どうしているか分かりませんが、さっき長瀬少尉の名前が出ましたが、呉工廠の同僚の長瀬かもしれない。長瀬だったら岩瀬少佐のことを知っているかも。俺の家に帰れば長瀬からの手紙があるから長瀬の住所はわかるよ。今夜は汚い長屋だが俺の部屋に泊まればいい。」

「本当にいいんですか。」

「アア。いいよ。でも、もう少し飲んでからにしよう。いいかな。」

「喜んで。」

「桔梗丸、九鬼大佐、船員の方々へケンパ~イ(献杯)。」

「同じくケンパ~イ(献杯)。」

二人の声が店内に鳴り響いた。


長岡は常磐線の水戸駅前に立っていた。

9月も下旬に入り暑さが緩み、過ごし易くなってきていた。

「あー。清々しい。」長岡は手を広げ大きく息をいっぱい吸い込んだ。

水戸と言えば徳川御三家の一つ、水戸藩があったところだな。

水戸市内は昭和20年8月2日に空襲に遭い市内の4分の3が焼失していたが、5年が経った今では徐々にではあるが家屋の復興が進んでいた。

長岡は赤羽から教えてもらった長瀬の住所へと歩き出した。

駅前から10分も歩いていると人通りが途絶えてきた。

田んぼや畑で働く人を見つけては、声を掛けて住所を聞き目指す場所へと急いだ。

もう近いはずだが、どこだろう。

遠くの方に畑の農作業している人が見えた。

近くに来ると、腰が曲がっている老婆が畑に種を植えていた。

「わーこわい(しんどい)じゃ。」老婆は独り言い、左手で腰を叩いた。「すみませ~ん。このご近所に長瀬徹也さんの御自宅はありませんか。」

老婆はほっかむり姿で、「や~。てつやの家は、この道のちっと(ちょっと)先にあるっぺよ。けんど、家に行ってもてつやは今はいね~よ。役所さ働きに行ってるっぺ。」

「ありがとうございます。家の前で待ってみます。」長岡は老婆へ深くお辞儀をし歩き出した。

10分程歩いたらポツンと家が見えてきた。長岡は垣根を通り家屋の前で、「すみませ~ん。長瀬さんのお宅ですか。」と何度か声をかけたが、老婆が言った通り誰もいなかった。

それから2時間程、軒先に座り帰りを待っていた。

日が陰ってきたころ、垣根をくぐり精悍に日に焼けた男が入って来た。

長岡はその男の顔を見て間違いのない長瀬少尉だと確信した。

立ち上がり、「勝手にお邪魔し申し訳ございません。長瀬少尉殿でいらっしゃいますか。自分は桔梗丸の船員だった長岡です。覚えておりますか。」長岡は長瀬へ敬礼をしていた。

長瀬は長岡を見た瞬間、確かに驚いた表情に見えたが、「長岡さんとか言ったっけ。俺はあんたのことは全く知らないな。」と答えた。

「桔梗丸が沈没した前日に、岩瀬少佐殿、青木少尉殿とご一緒に(桔梗丸船員達が)投降するよう説得に来られたときに、お会いしました。長瀬さん長岡の二人で長さんコンビだねと言って下さいました。」

「知らないな。海軍の岩瀬少佐、青木少尉は知っているが、説得?わかんねいな。それに、桔梗丸は竣工式以来観ていないしな。」

「そんな…。思い出してください。お願いします。」

何故に長瀬が嘘をついているのかわからず、長岡の目は真っ赤になっていた。

「行っていないのに思い出しようがない。まあ、折角来てくれたのだから、軒先ですまないが、お茶を出すから座って待ってなさい。」

それから、長岡は桔梗丸との出会いから別れまでのことを長瀬に語った。

その後、長瀬に巻物を渡し読んでもらうと、

「あんたの言うような説得はなかったが、どうしても岩瀬少佐と会いたいのか。」と長瀬は言った。

「九鬼船頭から生かしていただいた意味について分からないと戦時中の自分から前進できません。」

「う~ん。知ってれば教えたいが…。岩瀬少佐がどこに暮らしているかは分からない…。しかし、青木の居場所は分かるが…遠方だが行ってみる気はあるかい。」

「お願いします。是非、住所を教えてください。」

「青木は確か大阪の池田高校で教員をしているはずだ。多分だが、青木へ電話をしても会うのを拒否されると思うから直接会いに行った方がいいと思う。」

「え…。拒否されると…言うことは。皆さん私のことを知っているんですね。」

「えぇ~と、なんだかなぁ。いやぁ。俺は知らんな。大阪に行けば分かることもあるかも知れない…かもな。と。」長瀬は焦り変な言い方をした。

長岡はそれ以上は触れないことが良さそうだと思い話題を変え、「長瀬少尉殿、お役所で何をされているのですか。」

「少尉は昔の話。やめてくれよ。俺は水戸市役所で農業に関する仕事をしている。」

「何故に農業なのですか。」

「戦後間もなく、岩瀬少佐、青木と三人で飲む機会があったんだ。その時、日本の復興について語り合い、俺は食べるものが不足している今は農業の基盤。いや、土台作りが大切だと言い。青木は子供たちの教育だと熱弁を振るった。岩瀬少佐は経済復興にかかわる仕事がしたいと言っていたなぁ。まぁそういうことだ。」

長岡はお茶をぐぃっと飲み干し立ち上がり、「長瀬さん、長々とお話しいただきありがとうございました。」

「おおっ…。帰るのか。気~付けて帰れよ。」長瀬は座ったまま答えた。

「失礼しました。」

長岡は長瀬に頭を深々と下げ帰って行った。

長瀬は長岡が帰った方向に向かい、立ち上がり頭を深く下げていた。ずーと。


池田高校は昨年、放火による火災で校舎が焼け落ち、校舎復興のため当時の在校生達はマッチ売りのアルバイト等をして売上金の約50万円(今のお金で、500万円~600万円程)を寄付をした。また、地域住民の寄付や、近隣の府立高校の3校がバザーを実施し売上を寄付した行為が、大阪府を動かし校舎の再建が急ピッチに実現したところだった。

その大変だったことを知らない長岡は、池田高校の新たな校舎の前に立ち、新築のいい匂いがする校舎で学問するなんて羨ましい学生達だな~。と呑気に思っていた。

知らない学校の前だと何か緊張するな。

額や鼻に大きな傷のある長岡が玄関前をうろうろしていたら、教員と思われる20代の人が二人、現れ、「な、なにか御用ですか。内の生徒で、あなたのような(怖い)方と知り合う生徒はいません。もしかして、校舎の工事時に来た人材斡旋の方ですか。もう工事も終わり仕事はありませんよ。帰ってください。」「そうだ、出て行きたまえ。」と言った。

その二人は怯えているように思えた。

「何か勘違いしているみたいですね。私は海軍でお世話になった青木先生にお会いしに来ただけです。」長岡は、はにかみながら笑顔でそう言った。

「そうでしたか。はぁ。ホッとしました。青木先生でしたらグランドにいますので、校舎の裏手に廻ってください。」と一人の教員が答えた。

長岡は二人の教員へお礼をし、グランドに向かった。

グランドでは、遠くの方で、青木先生と思われる人と生徒5人がラグビーの練習をしていた。

長岡は練習の途中で声を掛けるのは気が引けるので、練習が終わるのを待つことにした。

青木の大きな声が聞こえる。「ちゃう。ちゃうやん。ハイパント(を取る時)は、ボールから目を離さず脇を締めないと(ボールを)落とすことになるんや。坂元ぉう。もう1球いくでぃ。」

「はぁい。お願いしまぁす。」

汗や土にまみれた身体やジャージ。いいなぁ。青春そのものだと長岡はずーと飽きずに練習を観ていた。

「若いっていいですね。」長岡の後ろから声がした。

長岡は振り向いてみると白髪の初老とみられる男性が立っていた。

柔和な顔で、「あなたもお若いが、青木先生と一緒にラグビーをされていたのかな。」

「いやーぁ。私は球技とは縁がなくって。は・は・はぁ。青木さんはラグビーをされていたのですか。」

「青木先生は小柄ですが大学の一流選手だったのですよ。わが校の生徒にラグビー部創部の発起人が出まして、私から青木先生へラグビー同好会の顧問をお願いし、やってもらっているのです。

部員15名が揃えば部に昇格できるのですが…、今はご覧の通り5名だけです。」

初老の男性はにこやかな顔で練習を見つめていた。

練習をしている生徒が初老の男性に気づき、向こうから「校長~。」と手を振っていた。

青木は校長へ一礼していたが、長岡には無視しているのか声を掛けてくれなかった。

「それでは、お若い方、ゆっくりと見て行ってください。」

と言うと、校長は校舎へ戻って行った。

日が暮れてきていた。

「みんなぁ、お疲れさん。」

その言葉に生徒が集まり、坂元が「先生に礼。」と生徒達に号令をかけた。「ありがとうございました。」

「おぅ。」

練習が終わったようだ。

青木は生徒と笑い語り合った後、ゆっくりと長岡の方へ歩いて来た。

「よっ。男前。元気にしてたか。」青木が屈託のない笑顔でしゃべりかけてきた。

長瀬のように知らないふりをされると思っていたので、長岡は面を食らっていた。

「私のことを知ってらっしゃるのですか。」

「知ってるさ。桔梗丸での俺と長瀬のコント、おもろかったやろ。」

「はい。お二人は昭和の爆笑王だと思ったくらいです。」

「だっろう。」青木は自分の首を絞め茶目っ気たっぷりの動きをした。

長岡はぷっと笑い吹き出した後、

「青木少尉、今日お伺いいたのは。」と言い始めたが青木に手で制止された。

青木が頷きながら、「長瀬から連絡があったよ。長瀬を許してやってな。桔梗丸の船員は皆、根絶やしにするとソ連から言われてたから、あいつはあんた(長岡)をあいつなりに守ろうとしたんだと思う。ほんと、かんにんな。」

長岡は長瀬の真意を知り目頭が熱くなってきた。

長岡は頷き、九鬼船頭が残してくれた巻物を青木へ渡し、「桔梗丸の皆さんが書いてくださった巻物です。お読みください。」と言った。

青木は巻物に一礼し、読み始めた。読んでいる途中で、「九鬼大佐…。う・う・う…。悔しかったでしょう。」と九鬼大佐が目の前にいるように言葉を発し涙を流した。

青木は長岡へ巻物を返しながら、

「ありがとうな。九鬼大佐に会えたような気になった…わ。あれから5年も経ち、ソ連も対民主主義(対米国等)で忙しく桔梗丸のことは忘れているとちゃうかな。俺が知ってることは話すで。」

「岩瀬少佐とお会いし話がしたいのですが…。」

「そうか…会いたいか。岩瀬少佐は今年4月に出来た三階菱商事に入社しアメリカの支社に勤務されていたが、あんた運がええな。(岩瀬少佐は)半月程前に帰国し、東京丸の内にある三階菱商事の本社にいるんちゃうかな。岩瀬少佐に会いたい理由、長瀬から聞いたで。九鬼大佐が長(岡)ちゃんを選んだ理由。わかるといいな。頑張りや。」

「青木少尉、ありがとう…。ありがとうございます。」

長岡は青木の優しさのある言葉に触れ、青木にがばっときつく抱きついた。

「おいおい、俺は変な趣味ないで。」青木は笑っていた。


数日後、三階菱商事の本社ロビーに長岡がいた。

受付の綺麗な女性に、営業の岩瀬へ会いたい旨を伝えると、「岩瀬は出かけていますが、時間は分かりませんけれども午後戻りとなっています。」と言われ、ロビーで待つことに決めた。(1時間程経ったかなぁ、もうすぐ昼だな。)それから更に2時間程過ぎた頃、髪を七三に決め茶系のスーツを着た岩瀬がロビーに現れた。

長岡は、小走りで近づき、「岩瀬少佐。」と言った。

岩瀬は急な声にびっくりしたが、その声の主が長岡と知り、「やあ。君か。少佐はやめてくれないかな。しかし、よく私の勤めている会社がわかりましたね。」と言い、にこやかな笑顔を返した。

「青木さんに教えていただきました。」

「そうですか。青木君は元気にしていましたか。」

「はい。高校生達にラグビーを教えていました。」

「大きな声で指導していた姿が目に浮かびますね。そうだ…。立ったままではゆっくり話ができないな。ちょっとここで10分程待ってもらえるかな。(自分の)机に戻り鞄を置いて来るから。」

「はい。お待ちしてます。」

岩瀬は戻ってくると、「西銀座まで。ちょっと歩くけどいいかな。」と言い、長岡を連れ出した。

歩いている間は、お互い桔梗丸が沈んでから今まであった事柄を話しあった。

岩瀬の足が止まり、「ここでいいかな。」右手で建物の看板を指していた。

看板にはカフェ・ド・ランブルと書いてあった。

玄関の扉を開けると「コロン・コロン。」とカウベルの気持ちがいい響きが鳴り響いた。

店内に入ると、「いらっしゃいませ。空いてる席にどうぞ。」30歳代半ば頃の店主と思われる人の声がした。

「マスター。四人掛けの席でもいいかな。」

「や~。岩瀬さん。いいですよ。今日はお仕事ですか。」

「後輩と久々に会いましたので、うまいコーヒーが無性に飲みたくなりここに来ました。」

岩瀬の言葉に店主は嬉しそうにしていた。

岩瀬が長岡に席を勧め、「長岡君は、飲み物は何にしますか。」と聞いた。

「岩瀬さんのお薦めでお願いします。」

「マスター、ブレンドコーヒーを二つお願いします。」

「ありがとうございます。ブレンドコーヒー二つ承りました。」

岩瀬は長岡へ、「さて、何を話そうか。」

長岡は早速持ってきた巻物を岩瀬に渡し、「この巻物は、桔梗丸が死んだ(沈没した)時、江島に一人残された自分に九鬼大佐達が置いて行ったものです。何故に自分が残されたのか。(桔梗丸の)功績や(その仲間たちのことを)覚えていてほしいだけでは理解できないです。」

岩瀬は、巻物に一礼し読み始めた。

長岡は岩瀬の指が震えているのを見た。

「桔梗丸、九鬼さん、悔しかったでしょう…。これから、貴方から聞いた長岡君への言伝を話しますね。長岡君、聞いて下さい。」

「はい。お願いします。」

「桔梗丸沈没の前日、貴君も知ってる通り私ら3名で九鬼大佐が投降するよう説得に行き、九鬼大佐と二人っきりで話すことができました。その話はこんなことだったのです。」

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