第5話~慶塾大学合宿所での試練~

「おい、1年坊、どうするんだ。2時間後には、練習が始まるぞ。盗んでもいいから、グランドへ白線を引いておけ。」2年生は3・4年生からの叱りを怖れて、1年生に噛みついた。

「いいか。何とかしとけよ。」「出来ないと、後でしばくぞ。」と口々に言い、2年生達は向こうに行ってしまった。

1年生、13人が集まり困り果てていた。

皆、日々の厳しい壮絶な練習や先輩の雑用の対応に疲れがピークになっていた。

「ちぇっ。2年生が(消石灰を)余分に持って来るのを忘れて来たのに。すべて1年生のせいか。たまったもんじゃない。」

一人が口を尖がれせながら呟いた。

「何校か、近くで合宿をしているから、手分けして当たってみよう。」と青木が言った。

「は~だぜ。仕方ないな。行くか。」長瀬が答えた。

結果、同じ大学の野球部へ頼みに行ったが、レギュラーが多校との練習試合に出ているので、勝手に(消石灰を)貸せないと言われた。

その後、他校のラグビー部2校にお願いに行ったが断られ、最後の望みは、帝国大学ラグビー部だけになっていたが、合宿所にはおらずグランドで練習中だった。

青木達は上級生の練習を見ている帝国大学の下級生に近づき貸してくれる様お願いしたが相手にされず拒まれた。

その時、帝国大学の上級生がこっちへ近づいてきて、「君、元気がいい声だね、聞こえちゃった。」と言いつつ、「困った時はお互い様。ラグビー精神はどこに行ったの。」と、帝国大学ラグビー部の下級生を諭していた。

(※10数年前、逆光で、その時は顔がはっきりしなかったが、今でも声は覚えていた。)

「私は岩瀬と言います。貴君は、慶塾大学の何年生かな?消石灰は十分にあるから持って行っていいですよ。」

「はい、助かります。本当にありがとうございます。私は1年生でフルバックをしています青木と言います。」

「自分も1年生で、フッカーをしてます長瀬と言います。」

「私も青木君同様にフルバックをしています。そのうち、君達と試合ができたらいいね。」

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