第6話 僕が先に好きだったのに~裏切り者の幼馴染~
僕はバーン。バーン・ブラックナイト。名門ブラックナイト家に産まれたまぎれもな貴族の生まれのエリートだ。子供のころから人よりも優れた魔術の才能を持っていた僕は両親を含めた周囲の人間から天才、神童と絶賛されて称賛を当たり前として生きて来た。
そんな僕には幼馴染が居る。親同士のつながりで、家の格は僕より劣るが良家ベルオリーズの一人娘のラキシス・ベルオリーズ。若干ふっくらとしているところはあるが顔立ちは綺麗に整っていた。そして、引っ込み思案ゆえか僕に逆らわずに従順につき従う所が嫌いでは無かった。子供の頃は2人で駆けまわって遊んでいたし、そういうことをするのが楽しかった。だから将来は僕の側室ぐらいにはいれてやってもいい位には気に入っていたし、好きか嫌いでいえば結構好きだった。
―――だがそんなラキシスの周囲の評価は成長するにつれてわかってきたがイマイチで、暗い、地味、デブという散々なものだった。そして成長に伴い、エスカレーター式の俺達と違い外部から生徒が入学するようになると、強靭!!無敵!!最強!!という“俺”のポジションはあっという間に奪われてしまった。俺は俺こそが世界の王っ!になる選ばれし存在だと信じて奪わなかったが、外から来た奴らは俺よりもはるかに優れた才能や技術を持っていて、俺はクラスでも中の上くらいへと転落した。
そしてそうなると称賛の声はどこかへいってしまった。ママンは相変わらず俺を褒めたたえてくれるが、他の奴らはもう俺の事なんかみちゃいない。
ふざけんなよボケが!!!!!!!!!!!!
俺を褒めたたえろ有象無象が!!!俺はブラックナイト家のバーンだぞ!!!!そんなイライラと息苦しさと憤りは全てラキシスにやつあたりをすることでスッキリすることにした。イライラするんだよぉ……!!
だがそんなラキシスは何を想ったか、中等部を卒業する前に俺に向かって告ってきた。
「子供のころからずっとバーン君が好きでした、恋人になりたいです」
……だったかな。正直、ラキシスの事はそれなりに好きだったしちょっと迷ったので答えをすぐにはしなかったし。俺ならもっとレベル高い女子も落とせると思ったけれどラキシスをキープしておくのも悪くはないかなと思う位には愛着もあった。
だが、クラスの奴らにラキシスの事を聞いたら、揃ってデブ、地味、メガネ、暗いと散々な評価なのは相変わらずだった。
「なんだよバーン、お前もしかしてラキシスに告られたのかよ!?」
そんな風に茶化されたりもして、屈辱を味わった。クソが、やっぱりラキシスなんかじゃ俺には釣り合わない!!
俺は中等部の卒業式の日、ラキシスに告白の返事を聞くために呼び出されたときに、むしゃくしゃした怒りと共に怒鳴ってやった。
「うるせえええんだよこのドブスがよぉー!!おまえみたいなクソブスがこの俺と釣り合うと思ってるのかよ、デブ女がよぉ!お前みたいなデブなんか死んでもお断りだこのブタがよぉ!!お前なんかと一緒にいたら俺の方まで後ろ指刺されるんだわバカがぁ!!」
俺の言葉に涙目になって震えるラキシスを観ていると――――高揚感がみなぎってきた。言い返さない奴にマウントとるの最高に気持ちいいわぁ~!!
そしてダメおしに、アイツが大事そうに持っていたクラスの友達に書いてもらった寄せ書きの上に、ぐしゃぐしゃと俺の文字を書きなぐってから地面に放り捨ててふみつけてやった。
あっあ~達する、達する!!!超☆絶頂~!!!その瞬間俺は人生最高の絶頂間に満たされていた。
――――だがヤツは弾けた。
高等部に入学した時にはラキシスは、痩せてスタイルの良い美少女になっていた。性格も社交的で明るくなり、周囲の人間とよく話す人気者になっていたのだ。
なんだよそれぇ?!ふざけんなよ、俺がフッたら何で美人になってきてるんだよ!!!最初からそれだけかわいくなってきてたらセフレぐらいにはしてたっていうのに!!当てつけかよ!!嫌がらせかよ!!!!
そして高等部になってさらに優秀な生徒が増えた事で俺はクラスの中でも底辺の陰キャになりさがっていた。
この惨めさ、屈辱。これもなにもかも全部ラキシスのせいだ!!!!!ゆるせねえ!!!!!
挙句に、そんな俺を憐れんだのか、また一緒に話したりするようになりたいからってお弁当なんて作ってきやがった。バスケットの中には俺の好物がたくさん、手間暇をかけたのが解る。
だから俺はそれを、殴りつけて叩き落してやったんだ!!!!最高だったぜあの時の泣きだしそうなラキシスのツラァ!!お前もやってみろよ射セーの100倍は気持ちいいぜえ!!!!!
……だが、そこからが最悪だった。転入生のグレイブとかいうダボカス野郎があろうことか俺を卑怯な不意打ちで地面にめり込ませた挙句、俺の大切で尊い股間のバーンくんを滅多打ちにしやがったのだ。こんなの万死に値するでしょう?!?!?!
大勢の前で与えられた屈辱と怒り。
そしてそのグレイブと従者の女は俺のクラスに転入してきて人気者になり、それだけでなくいつのまにかラキシスとも仲良くなっていたのだ。
聞くと、部屋にお茶会に招かれたりしていた。
どういう事なんだよ?!おかしいだろ。ラキシスは俺の事が好きだったんだろう?!ならそんなポッと出の男の相手なんてしてないで俺の相手を知ろよ!!ま、まさか軽薄チャラ男のグレイブに、初めてを捧げてしまった、のか?!お茶会とは名ばかりのくんずほつれつ濃厚で淫靡な時間を過ごしているのか?!!やめろよ!!!ラキシス、お前は俺の幼馴染だろうが!ならその処女は、初体験は俺に捧げるべきだろうが!!!!!!!!
なんでだよ、どうしてこうなった……!!誰か教えてくれよ!!!!俺は何も悪くなかっただろ……!!!
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