第5話 陰気爆裂!無礼バーン!!


 ラキシスの部屋はアロマの凄くいい匂いがして、可愛らしい小物が並び綺麗に手入れされていた。さすが優等生の部屋!って感じ。

 ラキシスの部屋で頂いたお茶も美味しく、ラヴェルと一緒にその味を楽しませてもらった。ちなみに俺はラキシスを伴って入学してきたけれど、ラキシスは従者を連れてきていないようで自分で淹れてくれていた。ラキシス自身のお茶の淹れ方もすごく上手で、従者要らずなんじゃないかってレベル。この子何でもできるなぁ。


 転校してきて困っていることはないかに始まり、学校や授業についてや最近の流行りの話題や、魔王が復活する噂についてなど年頃のティーンエイジャーらしい話題に花をさかせたけれど、こうやって話しているととラキシスも普通の女の子である。


「……なぁラキシス。聞いてもいいかな?」


 俺の言葉に、静かに目を伏せるラキシス。

 この態度を見ると、俺からそう言う質問をされることは重々承知、あるいはこの間の説明をするために招いてくれたのかもしれないな。プライベートな固執なら他の誰かに聞かれることもないし、ラヴェルと一緒なので男を連れ込んだという訳にもならない。そう考えると色々な事をしっかりと考えている子だなと感心する。


「バーン君との事ですよね」

 

 そう言ってラキシスは棚から何かの冊子を持ってきたあと、ゆっくりとバーンとの事を話し始めた。クラスの男子達に聞いたのとほぼ同じ、バーンとは幼馴染であることや子供の頃は仲が良かったこと。小等部、中等部となるにつれてだんだんとバーンからのあたりがキツくなり、ギクシャクしてしまっていたことを話してくれた。


「でも、バーン君も最初からあんな風じゃなかったんです。子供の頃は神童って言われていてクラスで一番で学年でもトップクラスに卓越した魔術の使い手だったんですよ。いつも自信満々で、私の手を引いて色々な所へ連れ出してくれる男の子だったんです。

 でも、中等部になって外部からの入学生が増えるにつれて、だんだんと学年での順位も落ちて、私への接し方も乱暴になっていったんです……」


 ……あー、あるある。子供の頃ちやほやされて成長と共に自分より上の存在が出来て現実知るやつだよな。そこは少しバーンが可哀想だと思うけど、そんなのは努力で自分を高めるしかないし、それで近くにいる女の子に八つ当たりは普通に最低じゃないかね。


「それで、私中等部の卒業前に、バーン君に告白したんです。子供の頃から、私の事を引っ張って行ってくれるバーン君が好きだったから。支えたいなって思って。

 でもその答えは帰ってこなくて、それで中等部の卒業式に、バーン君に答えを聞いたんです。そ、そしたら、そうしたら……!」


 震えながら渡されたのは、中等部の卒業文集。そこには魔導写映機で転写された、クラスの集合写真もあり、当時のラキシスの姿もある。……たしかに髪形も地味だし今より少しふっくらしているかもしれないけれど、全然綺麗だと思う。とくに写真でもわかる澄んだ瞳がとってもイイ!

 だがの最後のページ。恐らく同じクラスだった友人達からの寄せ書きメッセージ、それらを潰すように大きく書かれた文字が飛び込んできた。


―――お前みたいなデブと付き合えるか鏡視ろブス


「……ハァッ?!」


 プルルルルルルャァッと黄色い兎、もしくは猫のインターネットミームのような声が出た。これ書いたのバーンだな?!教室で黒板にかくバーンの文字だからわかりやすい。あいつ神経質にぴっちりした文字描くもんな。


「……そして、太った女とは付き合えない、一緒にいても周りの目が気になるし暗いから嫌だ、という旨のことを言われて、振られたんです」


 言葉を選んでいるが、実際にはもっとひどい言葉を投げかけられたのが察せられる。

 俺は別に女子が痩せてようが太ってようが、悪党とか悪い奴じゃなければ敬意をもって接するけどな。

 というか女子が太ってるってこき下ろしたり体重について過剰に責めるのはご法度だぞマジで、そういうところから拒食症になっちゃったりするんだぞわかれよー。バーン、お前絶対に許されないよ。


「それで、一念発起して―――バーン君には振られちゃったけど、バーン君が一緒にいても恥ずかしくないお友達でいられるようになろうって、頑張って痩せて、美容にも気をつけたり、身だしなみも整えるようにしたんです」


 ラキシス健気で良い子過ぎん????あとバーンクズすぎんか??????????????


 申し訳ないけどバーンとラキシスじゃ釣り合わないと思うわ。あとラキシスを暗いっていったバーンの方が陰気で無礼だよ。無礼すぎるわ!!!

『陰気爆裂!無礼バーン!!』じゃねぇんだよなぁ!!!!

 バーンお前もうスリーアウト超過だよ!!!!もうここまでくるとただただラキシスが拒食症とかにならずにすんで本当に良かったレベル。


「それで高等部に入るタイミングでイメージチェンジを頑張ったって訳ね」


 俺の言葉に静かに頷くラキシス。


「でも、それからバーン君が私をさけるようになって、私が頑張れば頑張るほど、バーン君は冷たく当たったりするようになって……振られちゃったけど前みたいにまたお話したりする友達には戻れないかなって」


 それで朝にお弁当をもって、昼食の約束をとりつけようとしたところで叩き落されたのがこの間だった、ってワケね。

 ……ヤバいな、バーンがモラハラDV拗らせBSS野郎というクズ属性ドカ盛りなのがわかったショックの方がデカい。もうこれドカ盛りどころかドカ喰い気絶レベルだよ!!!


「なるほど、だいたいわかった。ひとつだけ言えるのは―――ラキシスはえらい!めっちゃえらい!!!凄い!頑張った!!!イエーイドンドンパフパフー!!」


 そう言って立ち上がり、ノリノリで全力拍手をした。そんな俺のトンチキな様子にラキシスはびっくりしてるが構わず続ける。


「―――自分を変えるために磨く努力をして達成したってのは本当に凄い事なんだ。それをやりとげたってのはもっと胸を張っていい事なんだ」


 捻くれたバーンが何を言おうと、ラキシスの頑張りは否定されちゃいけないものだと思う。

 そんな俺の言葉が通じたのか、顔を真っ赤にして俯くラキシス。

 頑張った筈のラキシスが悲しむなんてことあっちゃいけない。あの幼馬鹿馴染をなんとかしなくちゃなぁ。……けどアレ、拗らせすぎて改心しなさそうだしなぁ。

 でも、俺がやるべきことは段々と見えて来たぞ。

 悪いけどバーン、お前クズすぎっからラキシスは俺が寝取るわ。お前にはBSSがお似合いだよ。

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