第4話 やっぱりBSSじゃん?当然の結果です
時計を壊したから正確な時間はわからないけど、日付が変わるであろう時刻までラヴェルに“搾り取られ”ることになった。今は満足したのか、すっかりご満悦の表情を浮かべて俺の隣ですぅすぅと寝息を立てている。
……まったく、えちえちな従者ちゃんだぜ。風邪をひかないようラヴェルにシーツをかけてやる。俺?シーツなんかなくても風邪ひかないから大丈夫。昔からそう、何故か風邪をひかない体質なんだよなーハッハッハ!
「あーあ、異世界転生っていっても中々上手くいかないもんだなぁ」
これまでを思い起こすが異世界転生というものは、ネット小説とかアニメでみるみたいに楽チンチン……もとい楽ちんでチート無双なんだと思ってた。
ふたを開けてみれば、転生して産まれたのは中の上くらいのそれなり~の家で、持って生まれた能力もそれなり~、見た目もそれなり~というそれなり尽くしのスペックで、俺自身は無敵とかチートには程遠いものだった。
幸いにも可愛い幼馴染の婚約者がいたが、そちらとは“哀しい結末”になってしまった。
そして残ったのはヤリまくりモテまくりハーレムを目指すという人生の大目標と、俺に尽くしてくれる桃色ぺたんこ美少女従者だけ。
おまけに追放前の学校でも全力でハジけバトルしまくったので、すったもんだで悪役令息扱いされて追放を喰らってしまってこのザマだ。
転入試験を突破できたのでこの学校には来れたが実家からは絶縁状態で学費は卒業までの分を全額前金で振り込まれたみたいだけど、これは手切れ金みたいなもんで卒業と同時に勘当と理解している。
……はぁ、思ったよりも異世界転生って難儀なもんだ。
「むにゃぁ…ご主人さまぁ……♡」
涎を零しながら寝言を呟いているラヴェルの頭を撫でると、嬉しそうにふにゃぁと声を漏らす。……なぁに、諦めずに何度だってヤればいい。そうだ、俺は一人じゃない!!
「―――ハーレム王に……俺はなる!!」
ドンッ!という効果音を心の中で鳴らし、改めて誓いながら俺も瞼を閉じて睡魔に身をゆだねることにした。スヤァ……。
転入したけれど学力的には十分ついていける感じだったので、学園生活自体は特に困る事は無かった。
クラスの皆、特に男子達とはおバカなノリでウェイウェイと盛り上がったりしているので人間関係も良好に構築できている、と思う。話の中心はうんことかちんことかおっぱいとかどの女子が可愛いとかそういう話ばっかりだけどね!!世界や場所が違っても、男子ってのは下ネタとエロがあればいつだってどこだって友達になれるのである。男子って単純でいいよネ!
バーンだけは、俺に対して敵意満々の視線で睨んできている視線や俺を見て舌打ちをしているのを感じるが、視線を向けるとそそくさと視線を外す……言いたいことあるなら言いにきなよウェルカム。
ラヴェルの方も女子達と上手くやっているようで、のんびりした態度と裏腹に高いスペックと人当たりの良さで俺よりもずっとクラスの輪に溶け込んでると思うし、美少女という事も有りクラスの外からの注目度もラヴェルの方が上っぽそう。
……そして転入初日に色々とあったラキシスとも、結構打ち解けた。このあたりはラヴェルの明るさやコミュ力、あと女子同士というのも大きい。
クラスの中でも男女の話やえっちな話が好きなムッツリスケベの男子、あとラキシスやバーン君と同じ中等部からこの学園に進学してきている男子達とも仲良くなったので2人の話を聞いたことをまとめるとこうだった。
―――ラキシスとバーンは実家の領地も近い幼馴染だった。
中等部くらいまではラキシスちゃんは元々今よりもずっとふっくらして大人しい眼鏡女子だったたらしい。
そのころは、今よりも2人は仲が良く、傍から見ているとラキシスちゃんがぞんざいに扱われている事もあったけれど仲自体は今よりも良かったようだ。
だが、ラキシスちゃんは中等部から高等部に上がるタイミングで驚くほどの激ヤセとイメージチェンジをして、今のようなすごい美少女スタイルになった。
だがラキシスが垢ぬけ、周囲と積極的に関わったり社交的になった事でバーンはラキシスを避け、次第に敵視するようになったらしい。
話しかけるラキシスを無視したり、酷い時には突き飛ばしたり、暴言を言っている事もある模様。
そしてバーン自身も、ラキシスが人気者になるにつれてクラスの皆を小馬鹿にするような態度を取ったり、行事やクラスのイベントに参加する意欲をみせなかったり、斜に構えて取り組むようになったとの事。
……わぁ、拗らせタイプのBSSかぁ……BSSだよなぁ……。
2人の間のやりとりはわからないけれど、今の所バーンを擁護する要素が何一つ見当たらない。あとラキシス、カワイソス。そんな幼馬鹿馴染(おばかなじみ)なんてさっさと吹っ切った方がいいよ、その方が人生楽しいんじゃないかなぁ。
ラヴェルがラキシスとは仲良くしてるみたいだし、ラキシスにも話を聞いてみようかな。俺こう見えても女子の胸襟開いて話を引き出す事には自信があるんだよ、まぁそうやって色々ヤリまくった結果が故郷追放なんですけどね!!!!泣いてないよ!!
さて、ラキシスとバーンの事について武力介入するか否か……撃ちおとーせーなーい。
そんな事を考えながらラヴェルを伴って寮に帰ろうとしたら、校舎を出たところでラヴェルとラキシスが一緒にいた。
「やっはろーラヴェルー、帰るべ帰るべ」
そんな風に努めてフレンドリーに話しかけると、笑顔で振り返るラヴェルとお辞儀をするラキシス。……うん?
「グレイブ様、丁度良かった♪今、ラキシスさんからお茶会に誘われましたの、グレイブ様も一緒にって♡」
「この間ご迷惑をおかけしたお詫びも出来ていませんでしたから……。良い茶葉が届いたんです、これからお時間いかがですか?」
おぉ~っ、バッチでグーなタイミングじゃん。ラヴェルのコミュ力のおかげかな?でかした!ラキシスちゃんとバーンとの事も聞けそうだしいいねいいね流れ来てるよこれ!
瞬間、視線を感じたので瞬間的に振り返るとサッと物陰に何か、いや、誰かが姿を隠した。……あれはバーンだな!ストーカーかよ、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
引っ込む刹那、悔しさに歯噛みして親の仇でも見るみたいな目で俺をみてきてたけど、思ってることがあれば直接言ってこればいいのにね。そうやって行動に出ずに一方的に逆恨みしてるからBSSされるんじゃないの?知らんけど。
まぁ遠くから監視してるだけだし今は捨て置いてやろうかな。
「ありがとナス!お招きいただき恐悦至極ゥ!」
両手を後ろ手に回して腰で角度をつげてお辞儀をする謝謝茄子のポーズで元気にお返事をするゾ〜いいゾ〜コレ。
―――という訳でお話を聞くチャンスもやってきたことだし、ご相伴に預かるとしよう。さて、鬼が出るか蛇が出るかー。
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