第7話 ねぇ、今どんな気持ち?NDK??


 ラキシスとのお茶会でバーンとラキシスを取り巻く状況が何となくわかり、バーンに関してはほんの少し可哀想だと思う所はあるけれどあまりにも擁護のしようがない駄目野郎すぎるので情状酌量の余地はないと判断する事にする。


 そんな事のあった次の日の放課後、トイレから教室に戻る最中にクラスの女子が重そうな木箱を抱えてよろよろと歩いていた。ワカメのようにウェーブしたセミロング黒髪の女子の後ろ姿が見えた。あの子は確かバーミアって言ったかな?

 両手で抱えるようにしてやっと持てるサイズの木箱を3個も詰んで持ち、右へ左へフラフラとヨレている。……女の子が運べる量じゃないだろ。


「よう、これどこ持っていけばいいんだ?」


 追いついて横から木箱を2つかっさらい、声をかける。そんな俺の声に、前髪を左右に分け一重に目の周りのクマも深い顔がこちらを見た後驚いて声をあげた。警戒心バリバリである。


「うわらばっ?!あ、あんたは転校生!」


「おー、転校生のグレイブ君だぜー。ってわけでほら、どこに運ぶんだこれ」


 寝癖のようにボサボサした前髪は真ん中分けにされており、広い額と一重瞼、そして不健康そうな目の周りのクマがよく見える。やっぱりクラスの女子のバーミアだった。

 性別が男だったらなんか世紀末救世主漫画にでも出てきそうな掘りの深い顔をしているけれど、れっきとした女の子で女子の制服も着ている。スタイルでいえば割と出る所がでて凹んでいる所が凹んでいると思う。

 直接話した事はないけど、クラスの連中曰くバーミアは自称天才で、なんかゴーレムを“木人形(デク)”とかよんで怪しい実験をしているとかでクラスの皆は距離を取っているようだ。……けど、俺には関係ないね。

 悪人面とか人を助けるツラをしてないとか言われてたけど、人を見た目で判断しちゃいけないと思うのよ。


「な、何よ……何のつもり?」


 怪訝そうに俺を見上げているので、改めて説明する。


「明らかに一人で運べる量じゃないじゃん。手伝うからさっさと運んじまおうぜ」


「……ヴェエッ?!なんで?なんで手伝い??」


「観てられないからだよ。ほら行くべ行くべ」


「わ、わわわ、わけわかんないわ……なんで男子がこんな事するの?」


「困っている奴を助けるのに理由なんかいるかい?」


 そんな軽口叩きながらバーミアの荷物を一緒に運んだ。


「理解不能……理解不能だわ……クラスの男子は皆わたしを悪人面とか言って避けるのに」


本気で理解できないという顔をしているバーミア。


「そういうの酷いよなぁ。人を見た目で判断するの良くないよなぁ」


「あ、あああ、あんたはちがうの?」


「女子には優しくがモットーでね。まぁ誰でもってわけじゃなし、悪人や悪い奴は除くけどな」


「わ、わたしは悪い奴じゃない!わたしは天才だぁ~」


「おー、そいつは凄い。じゃぁ何か困ったら天才に助けを求めるわ」


 そう言ってバーミアに手を振ってから別れ、ラヴェルに合流しようと歩く。うむ、人助けをすると気分が良いZE☆!


「こんにちは、グレイブ君」


 見計らったようなタイミングで声をかけてきたのはラキシスだった。


「ようラキシス、今帰り?」


「うん。良かったら一緒に帰りませんか?ラヴェルちゃんも一緒に」


 ―――お茶会以降、ラキシスとの距離は近くなったと思う。俺の事をグレイブ君、ラヴェルの事をラヴェルちゃんと呼ぶようになった。話し方も砕けて、遠慮せず話をしあえるようになったと思う・特に女子同士なのと、ラヴェルが転校生ということもありよく気にかけてくれているようだ。純粋に面倒見が良いのと優しいのだろう。


「グレイブ君は優しいね。さっきバーミアちゃんを手伝ってあげてるのが見えたよ」


「なんだ、見てたのか」


 照れ臭さを隠しつつそう言うと、あははと苦笑するラキシス。


「たまたま、向こうの校舎からだけどね。バーミアちゃんとは中等部からの友達だけど、先生の手伝いをしたり凄く良い子なんだよ。奇跡の街、なんて言われる街の有名なお医者さんの弟子なんだって」


「へぇ、そうなんだ」


 ほらね?人は見た目によらないじゃん。でもその有名なお医者さんって白髪で4兄弟の次男だったりしない??


「……クラスの男の子とかは、バーミアちゃんから距離をとっているのに、グレイブ君はそういうのないんだね」


「うむ。俺は女子は等しくリスペクトしてるからな―――まぁ悪人は除くけど」


「……ふふっ、グレイブ君のそう言う所は素敵だと思う」


 そんな事を言いながらラヴェルと合流したが、なんだかんだでラヴェルと話す機会も増えたし、自然な笑顔を見せてくれるようになった。

 やっぱり女の子には皆、笑顔でいてほしいもんな!

 ゆくゆくは俺のハーレムに入ってもらうぞラキシス、なんてねー。

 そしてそんな風にラキシスとの距離が近づくにつれて、日に日に物陰からの視線が強くなってきた。勿論視線の主はバーン君。ねぇどんな気持ち?どんな気持ち??まあ最近の視線からは不穏なものを感じるんだよなぁ、なんかやらかそうとしたらシメるけどな!

 って今なんか変なフラグ立った?俺またなんかやっちゃいました?

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