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(遠藤彰子の絵を見て)


されど波なき涕泣や正午の街


鈴蘭や日々照らすあめ皇女ひめみこなど


めぐる時を問ふ人々や夏の街


愛は小声か蒼空そうくうをゆく羽もなし


虚空より鼓動はげしき菜種梅雨


三叉路の長き夕陽と仔犬かな


斜光の街蕾降る日の少女譚


召命のも煙吐く工場街


若き影も薄くならざり春の暮


思ひ出は鈍色の空月あか


地母神水脈みおの大地を揺らす焰樹林


冬山河すべての星を母とせよ


深海に根源のうおひかりけり


地母神の眠りを解かぬ渚かな


月天心郷愁といふ花吹雪

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