第84話 野外で
フリージングウルフの討伐に向かった日の夜、ナナセは一定間隔でランゼンに作って貰った鉄柱を地面に突き立て、入浴を隠す為の仕切りの前準備をしていた。
「設置が終わったから下のフックに引っ掛けていってくれ、そして最後に仕切り同士をタープクリップで2~3ヶ所ずつ止めたら完成だ」
「おけー」
「まかせてー」
「穴に通せばいいんですのね?」
「それが終わったらユウカは魔法で水を温めて、私は晩御飯を作っちゃうから」
「あーい」
「まさか冒険の途中でお風呂に入れるとは思いませんでしたわ、本当にアヤカさんのスキルは凄いですわね」
「実際アヤカが居るからこそ狩った魔物を持ち込めるし、旅に必要な大量の荷物を持っても身軽でいられる上メシも美味い、もし居なかったらと思うと頭が痛くなるな」
「もう、褒めても晩御飯しかでませんよ!」
「いつも美味いメシあざます!」
ちなみにこの日の晩飯は
この世界のトマトであるトルティを潰して、みじん切りにした
しかも大量にストックを用意していた所を見るに、恐らくいつでもパッと揚げられる様にしておくのだろう。
「こんなに美味しい物を作れるなんて、王宮お抱えの料理人になってほしいくらいですわ!!」
メンチカツのサクッとした食感と中から溢れる肉汁、それに掛かっているソースの味わいと、バンズの香ばしさが一つとなったバーガーを絶賛するリミーナ。
気持ちは分かる、オレも美味いと感じているから。
「そういえば、お風呂の順番はどうするの?」
指についたソースを舐めとりながらユウカが風呂の順番について聞いてくる。
「オレは最後に1人でいいとして、浴槽が約150×130くらいの広さだから足を伸ばしたとして2人でゆったり、詰めれば3人は入れると思うぞ」
多分女の子が足を伸ばして入浴すれば幅40cm前後、奥行き約100cm前後、高さを45~48cmと仮定して150×130×50で作ったからな、しかも男視点での目測計算だから、実際入って見ない事にはどんな具合か全くわからん。
後で意見を集めつつ手直しを加えて行くか。
「万が一入浴中に魔物が来た事を考えると戦力的には私とティナさん、ユウカとリミーナさんですかね」
「私とティナ、姉さんとリミーナの歳が近い2人でってのもあるけど」
「それならアヤカさんとユウカ、私とリミーナさんって言う形にも出来るけど」
4人が話し合っている中、ナナセは明日相手にするであろうフリージングウルフの事を考える。
何せ相手はAランクの魔物、ナナセ自身は2度Aランク以上の魔物と戦ったが、他のメンバーは初めて、特にティナに関しては実力がまだ戦えるレベルにまで至ってない為、危険極まりない。
万全を期すのならオレとティナでチームを組んで、アヤカとユウカ、そしてリミーナの3人で1匹に当たらせるのがいいだろうな。
実力的には3人共ソロで倒せてもおかしくないとは思うけど、安全面を考えればソロはまだ心配な所がある、ティナについてはオークと同じ様に、オレが弱らせてから
止めを刺してもらうか、Bランクの魔物と互角に戦えるくらいにはなって欲しいし。
ふと4人の方に視線を向けるとそこに居たのはアヤカとティナの2人だけ、どうやら話し合いの末アヤカの案が通った様だ。
そしてティナもアヤカに何かを相談している様子、ナナセも自分を呼んでの相談ではないので、「どうしたの?何の相談?」と、入って行こうとは思わなかった。
その後は湯冷めに気を付けつつ、焚火で暖まりながら3~40分交代で風呂に入り同じ順番で休む事に、ちなみに風呂の評判は上々であったのでオレは得意気だったが、幾つか問題がわかった。
① 階段的な段差がないので、入る時と出る時に脚を大きく上げる為色々と恥ずかしいとのこと。
② これは問題では無いがアヤカとユウカの2人からの意見で、石鹸が欲しい、贅沢を言えばシャンプーやトリートメント、コンディショナーの作り方を知らないかとの事。
①ついては幾つか余ってるレンガがあるからそれで作ろう、ただ②がなぁ……石鹸は割と簡単に作れるけど、シャンプーやトリートメントなんかは、材料がごく一部を除いて知らないし。
何よりも見様見真似で作った物が、どんな影響を与えるか分からないのが怖過ぎる、そもそもこの世界の物をよく知らずに体に使おうなんて危険極まりない、成分分析やら生物実験やらを通してからじゃないと人になんてとても使えない。
もし体に痣や髪に悪い影響なんて出たらと思うと…………まぁ石鹸は動植物から採れる油に、植物の灰汁をこした物をよく混ぜ合わせるだけだから、時間があったら作ってみるか。
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