第2話 初めてのステータス
部屋へと通されたオレ達は思い思いの場所に座った。
少しの沈黙の後、姉妹(姉)が喋り始めた。
「あの…こんなことになり、私を含め皆さん混乱していると思いますが。まずは再度自己紹介をしませんか?」
オレはこの状況に対してどうするかにばかり意識が向いて、信頼関係、協力関係を築くための一歩が抜け落ちていた。
全員がその言葉に頷く。
「では最初は言い出した私から。名前は幸城 綾香(ユキシロ アヤカ)、アカヤと呼んでください。高校3年生で、妹と一緒に校舎出たと思ったらあの場に居ました。どうしてこうなっているのか、これからどうしたらいいのか、正直な話、不安でいっぱいです……なので今後の事について皆さんと相談、協力していければと思っています。」
不安を抱えたままなのに、現状をよく見て考えてる当たり、頭の回転と切替がとても速い子なのだろう。
そんなことを思っている間に次々と自己紹介が進んでいく。
「私は幸城 優香(ユキシロ ユウカ)、高校1年生です。苗字から分かると思いますが、アヤカは私の姉になります。苗字だと被ってしまうので私の事はユウカって呼んでください。姉の話にあった通り、部活を終えて2人で校舎を出たと思ったらあの場にいました」
「次はオレだな。名前は楠井 健吾(クスイ ケンゴ)、ケンゴって呼んでくれ。大学の4年生で、知り合いに会いに行く途中だったんだけど、気が付いたらここだった。協力に関してはもちろんオーケーさ、二人ともよろしく。」
「じゃ~次はオレ。垣崎 智也(カキザキ トモヤ)って言います。高1で、学校帰りに買物して、1人エレベーターに乗ってたんだけど、降りたと思ったらここに居た。ただ、オレは漫画みたいな展開でちょっとワクワクしてる」
「最後はオレか。名前は七瀬 和司(ナナセ カズシ)、大学の2年生だ。苗字でも名前でも呼びやすい方で呼んでくれ。ソロキャンプに向かおうと準備をして外に出たらこの世界に居た。とりあえず少し体を休めてからこの世界のこと、そして一般人のオレ達にどうして助けを求めるのかとか、色々情報を集めようと思うんだけど、皆はどう?」
「私達はそれで構いません」
アヤカさんが話す横で首を縦に振るユウカさん。
「りょーかーい」
事を軽く考えているのか、それとも高揚感のせいなのか間延びした返事をするトモヤ君。
自分達、いや極端な話、自分の今後に大きく関わってくるんだから、もう少し真剣に考えようよトモヤ君。
「あぁ」
少し不機嫌そうな感じを出しながら了承するクスイさん、年上を差し置いて今後の事を話したのは不味かっただろうか。
方針を決めたあと、オレは城の中を見て回ってると至る所に兵士やメイド?女中?が居る、まあ城の中だから当然と言えば当然な訳だが、今まで無縁だった存在が目の前に現れると、分かってても驚く。
城の散策中に通りかかった城壁から、修練場と思しき場所を見つけたので向かうと、丁度稽古をしに出てきた兵士達に色々と教えて貰うことが出来た。
【ステータス】【スキル】【魔法】【魔物】【ダンジョン】【各ギルド】の存在、知られたく無いスキルや魔法は任意で隠せること。
ステータスって、ゲーム内キャラクターの能力を表示してくれるアレがこの世界にあると、しかもスキルや魔法まであるなんて、ある意味地球に居た頃より便利な機能だ、しかも出し方は念じるだけでいいらしいし。
そうとなればさっそく人気の無いところで自分のステータスを見てみよう。
周りをよく確認してから……(ステータス)
【名前】 ナナセ カズシ
【レベル】 1
【生命力】1851 【魔法力】513 【力】937 【魔力】374 【俊敏性】832
【体力】685 【魔法抵抗力】553 【物理攻撃力】937 【魔法攻撃力】374
【防御力】343 【魔防】277
【スキル・魔法】
剣術【達人】 徒手空拳【達人】 状態異常完全無効化【ユニーク】
闘気Ⅰ【ユニーク】
比較出来ないから高いのか低いのか平均なのかわからないな……冒険者ギルドに行けば分かるんだろうけど、城門の兵士が通してくれなかったしなぁ、城門以外から出るとなると、単純に城壁を越えてくとかか。
あとこの剣術や徒手空拳はじいちゃんのせいだな、この【ユニーク】ってレアって事か?
それともその人固有の物か?
それに状態異常完全無効化はわかるけど、闘気ってどうやって使うんだ?
(ポチポチ)
【状態異常完全無効化】常時発動
効果:ありとあらゆる状態異常を完全に無効化する。
【闘気Ⅰ】任意発動
効果:肉体の闘気を解放させ生命力・魔法力・魔力・魔法抵抗力以外の全てのステータスの上昇・肉体能力が大きく上昇
Ⅰ:《解放》 ステータス上昇限界値 1.3倍 発動時生命力5%消費
効果内容が表示されるだけで発動はしないか、ステータス表示のように念じるとかでもない、どうやったら発動するんだコレ、後は某アニメや漫画みたいに力が噴き出すイメージとかで……。
ゴゥ!!
「うぉっ!?」
なんだこれ、体から力がどんどん噴き出してる!
これがスキルの効果なのか!?
この世界にきてから驚きの連発だ、なんせ体から力が噴き出すような事は生まれて初めての事だ、でもこれなら越えられるかも。
そう思ったオレは、試しに城壁を越えるイメージでジャンプしてみた……結果、オレは城壁を軽く飛び越えて冒険者ギルドの前まで来た。
「ここが冒険者ギルドか」
一言つぶやいたオレはギルドの中に入る、さっきまで騒がしかった室内が静まる、きっと冒険者達になんだコイツって見られてるんだろうな、そんな視線を感じながら受付の女性に声を掛ける
「あのーすみません」
「あっはい! ご依頼ですか? それとも買取でしょうか?」
「いえ、依頼じゃないんですが、自分のステータスで冒険者適正があるかを見て貰いたいんですが……そういうのって出来ますか?」
「ええ、出来ますよ、それでは奥へどうぞ」
そう言われて奥の部屋に通された。
「ではステータスを見せて頂けますか?」
「これってスキルとかも全て見せないとダメですかね?」
「ステータスの数値に関しては全開示となっています。ですがスキル・魔法で知られたくないものは隠して頂いて構いません。ただ、依頼の中に条件として必要なスキル等が設定されている物もあり、それらを確認出来ない場合、その依頼を受けることは出来ませんのでご注意してください」
それなら表示しても問題ないと分かるまで、ユニーク系は隠しておくか。
「わかりました。」
【名前】 ナナセ カズシ
【レベル】 1
【生命力】1851 【魔法力】513 【力】937 【魔力】374 【俊敏性】832
【体力】685 【魔法抵抗力】553 【物理攻撃力】937 【魔法攻撃力】374
【防御力】343 【魔防】277
【スキル・魔法】
・剣術【達人】 ・徒手空拳【達人】
「うぇえ゛え゛っ!?」
(ビクッ!!)
ステータスを見た受付嬢さんが変な声を上げ、オレはその声にびっくりした。
「すっすみません! 少々お待ちください!!」
大急ぎで出て行ってしまった……
これはもしかして、なにかマズイ事になるんじゃ?
どうする?
戻ってくる前に逃げるか?
幸いここには窓があるし、でもそうすると確実に怪しまれるよな、かと言ってあの慌てようは絶対になんかある感じだ。
待つか逃げるかを悩んでいる間に、受付嬢さんが別の女性を連れて戻ってきた。
「お騒がせして申し訳ありません、私
「あ……はい」
【名前】 ナナセ カズシ
【レベル】 1
【生命力】1851 【魔法力】513 【力】937 【魔力】374 【俊敏性】832
【体力】685 【魔法抵抗力】553 【攻撃力】937 【防御力】343 【魔防】277
【スキル・魔法】
・剣術【達人】 ・徒手空拳【達人】
ステータスを真剣な眼で見つめるライラさん、心臓の鼓動が早くなる、断じてライラさんがキレイだからとかじゃない、それで早くなってならどれだけ楽か。
緊張しっぱなしのオレを余所にライラさんが、「ふぅ」と一息つき声を掛けてくる。
「ナナセさん、今まで魔物を狩った経験はおありですか?」
魔物?
魔物どころか動物すらありませんが?
そもそもこの世界の住人でもありませんし?
「いえ、一度もありません、あのーこのステータスだと冒険者としてはどうなんでしょう?」
恐る恐る聞いてみる。
「結論から申し上げますと、あります。それも十分過ぎるほどに。」
おぉ、それなら戦争に参加しなくてもそれなりに食って行くことは出来るかもしれない、さすがに人相手に戦うのは……ん?
十分過ぎるほど?
「十分過ぎるほどのステータスなんですか?」
「はい、レベル1であるにも関わらずこれ程のステータス。はっきりと申し上げますと、異常です。」
レベル1で高ステータスって、こっちに来てからは何もしてないし、思い当たる節は……じいちゃんとの稽古しか思い当たらないな、でもそれだけでこんな状態になるものなのか?
他には、この世界と元の世界とで、かなり重力に差があったり。
単純に身体の強さがこっちと向こうで違ったりと色々あるけど、考えてもまったく分からないな。
他の皆がどれくらいのステータスになるのかも気にもなるけど、今は外の情報がほしい。
特にディルフィニールとフェングリフとの戦争について、冒険者ギルドなら何か知ってるかもしれない。
「田舎で育ったから、自分のステータスがそんなに高いとは思いもしませんでした。あと知り合いから聞いた話なんですが、フェングリフ王国がこの国に、ちょっかいを出してるって聞いたんですが本当ですかね?」
「フェングリフ王国がディルフィニール王国に……ですか? いえ、そんな情報はどこの冒険者ギルドからも入っていませんが、一体誰からそんな話を?」
ん?
王様から直で聞いた話だったんだけど、単純に冒険者ギルドにはまだ情報が入ってないだけってことなのかな?
「フェングリフ王国とを行き来してる知り合いからなんですが、本当ですか?」
「間違いありません。冒険者ギルドや冒険者にとって情報の精度と速度は命と同義、そのことに関して虚偽の報告等ありえません」
ライラさんがキッパリと言う、嘘を言っている様には到底思えない、という事は王様がオレ達に嘘を言っている可能性があるってことだ、コレについては皆と相談だな。
ライラさんとギルドやランクの話しをしているうちに、外が暗くなり始めたので城に戻ろうとした際、「このまま登録しませんか」と言われたが、登録費用が無いので今は断って、城から出たことがバレる前に急いで戻った。
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