強制転移者達の放浪記
上條 祐樹
第1話 準備編 強制転移
陰キャの自分が珍しくリアルのイベントに出かけた帰りに事故にあったとか、遊んでるゲームの画面がいきなり眩しく光ったとか、そんなことがあったわけじゃない。
ただ普通に今日という日を生きていただけなのに、ぼっちキャンプに出ようとしてただけで、何故こんな事になったんだろうか。
「異世界の勇士達よ、どうか我が国を助けてはくれまいか」
オレは七瀬 和司(ナナセ カズシ)いきなり大きな広間に居ると思ったら王冠を身に着けた人(十中八九王様だよな)にそんな言葉を投げかけられている。
周りを見れば他にも同じ境遇だと思われる男女が数人いる、どうしてここに居るのか分かってない長身の男性、知らない場所で警戒心を強める同じ制服の女の子2人、突然の事でも少しワクワクしている制服の男の子とそれぞれだ。
そんな状態でもお構いなしに王様と思われる人物は話を続ける。
「今、我が国では西の隣国フェングリフ王国から侵略を受けており、国境沿いに位置する村や街の民の生活が脅かされようとしている、どうか……どうか我が民を助けてはくれまいか、この通りだ」
そう言い終わると王様と思われる人物は頭を下げる。
広間は騒然となっている、そんななかで。
「陛下!?」
傍に控えていた人物がひと際大きな声を発してるが、側近か?
「陛下、一国の王がおいそれと頭を下げてはいけません」
突然訳も分からない世界に召喚され、状況の整理も付かないまま王様に助けてくれと懇願される……新手の嫌がらせか?
何にせよ今は情報が欲しいし呼び出された者同士相談したい、変に舵を切られる前に時間を貰おう。
そう思い立ち俺は王様へ発言する
「オレ、あっいや、自分達はここに来たばかりで何も状況がわかりません、申し訳ありませんが、呼び出された者同士で話をする時間を頂けませんか?」
そういい終わると王様と側近は何か相談し始めた
所々噛んだが伝えたい事は言えた、こんな状況でスラスラと言える度胸はないと思いながら、今後どうするか考えながら同じ境遇の男女に視線を向ける。
制服を着た男子は。
「もしかして異世界に呼び出されて勇者とかになっちゃう系か!? そしてお姫様から結婚を申し込まれたりとかあったり? あったり!?」
いやいや君は何を言っているの?
王様の話聞こえなかった?
【侵略受けてるから助けてくれ】って不穏なワード言ってたぞ? 草なんて生やしてる場合じゃないぞホントに。
同じ制服の女の子2人は。
「え? ここどこ? さっきまで姉さんと一緒に学校だったよね」
「ええ、校舎を出るまでは間違いなく学校だったわ」
どうやら姉妹だったようだ、右も左もわからない状態で放り出されたせいで周りを見て警戒心を強めている。
長身の男性は頭を抱えながら。
「なんだよここは……異世界? 戦争? 冗談じゃないぞ、普通の一般人に戦えって言うのかよ、無理に決まってるだろ!!」
至極もっともな意見だ、そもそも自分と同じ日本から来た人間なら、まず戦争とは無縁だった訳だし。
そんな事を考えていたら王様と側近の相談が終わったようで、王様から。
「確かに、いきなり召喚されて助けてくれでは理解が追いつかぬな………明日改めて場を設ける故、考えてほしい、そのあいだ城の中を自由に行動してかまわぬのでな、何かあれば近くの者に声をかけてくれ、出来る限りのことはしよう、大臣」
「はっ! かしこまりました。その様に取り計らいます、ではそなた達、私に付いて来て下され」
こうして側近改め、大臣に続いて広間? 謁見の間? をあとにするのだが、一通りの話が終わった後で気が付いた、誰も名乗っていないことに。
その事を大臣に謝罪しその場で全員名乗った、許してくれたから良い様なものの、場合によっては牢に入れられたり、最悪処刑とかもあったかもしれない、なんて考えている内に部屋に付いた。
テレビでしか見たことが無いような、とても豪華な仕様の部屋に驚いた。
もう一生見ることは無いだろうと思い、オレはスマホで部屋を録画したくらいだ。
「では、女性のお2人はこちらのお部屋を使って下され、食事なども全てこちらに運ばせましょう、後で従者を付けますゆえ、何かあればそちらに」
「あの、すみません!」
大臣が話終わるよりも前に姉妹の姉さんが食い気味に声を上げた。
「このお部屋はお気に召しませんでしたかな?」
「いえ……違うんです。気に入らないとか、そういう事ではなく、ただ……不安なので、………その………男の人と同じ部屋に」
「という事なのですが、男性の方々は如何でしょうか?」
その発言に驚いた、だが考えても見れば確かに不安にもなるか、ここは【外国】ではなく【異世界】、手続きの必要はあるが外国でもスマホによる連絡・通信は出来るし、場合によっては大使館や領事館を頼ることも出来るが、ここは異世界。
スマホで連絡は取れないし大使館も存在しない、そうなれば最終的には同じ境遇の者に頼らざるを得ないよな。
そう思い他の2人に相談しようとした瞬間。
「勿論構いませんよ、困っている女の子を放っておくことは出来ませんから、2人もいいだろ?」
そう長身の男性が言い放つ、拒む理由も無いしオレも制服の男子生徒も。
「あぁ、うん」
「全然オッケー!」
「「ありがとうございます」」
その言葉を聞いて安心したのか姉妹はそろってと感謝を述べた。
ただその瞬間オレは見た、その男性の斜め後ろに居たせいか映ってしまった、その顔が一瞬いやらしくニヤける顔を。
問題を起こさせない為に寝ずの番をするしかないかぁ………面倒事は勘弁してくれよ。
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