第3話 ユニークスキル

「ステータスにスキル・魔法ってますますゲームみたいじゃん! さっそくみんな見てみようぜ!」


 言い終わるや否やさっそくステータスを開く、それを見て他の皆もおずおずとステータスを開き始めた。


【名前】 トモヤ カキザキ

【レベル】 1

【生命力】743 【魔法力】122 【力】482 【魔力】128 【俊敏性】283 

【体力】457 【魔法抵抗力】242 【物理攻撃力】482 【魔法攻撃力】128 

【防御力】229 【魔防】121

【スキル・魔法】

 ・オートガード【ユニーク】

 効果:自分に向けられた攻撃を察知してる、してないに関わらず盾・剣で防ぐ/弾く/受け流すことが出来る、ただし剣盾の耐久や受ける本人がその衝撃に耐えられるかは別


【名前】 アヤカ ユキシロ

【レベル】 1

【生命力】593 【魔法力】471 【力】493 【魔力】371 【俊敏性】412 

【体力】294 【魔法抵抗力】412 【物理攻撃力】493 【魔法攻撃力】371 

【防御力】147 【魔防】206

【スキル・魔法】

 ・護身術 ・初級魔法(水)(風)

 ・魔力干渉Ⅰ【ユニーク】

 効果:魔力で起こる事情に自分の魔力を当てる事で強制的に干渉出来る

 Ⅰ:単一事象破壊


 ・ストレージ・スペース【ユニーク】

 効果:物を無限に広がる別空間に保管できる、ただし魔法自体をこの中に入れる事は不可能、この中で保管している物は入れた時のままで一切時間経過しない、必要な物の名前や形を念じれば取り出すことが可能、又、一覧表示も可能、保管アイテムや保管スキルの中では最高峰の効果を持つ

 

【名前】 ユウカ ユキシロ

【レベル】 1

【生命力】 418【魔法力】658 【力】151 【魔力】582 【俊敏性】223 

【体力】248 【魔法抵抗力】453 【物理攻撃力】151 【魔法攻撃力】658 

【防御力】124 【魔防】277

【スキル・魔法】

 ・護身術 ・初級/下級/中級魔法(治癒)(炎)(雷)

 ・マジックキャンセラー【ユニーク】

 効果:魔法全ての硬直を破棄することが可能


 ・鑑識眼Ⅰ【ユニーク】

 効果:対象の情報が分かる

 Ⅰ:対象の名前とランク表示・罠の有無・アイテム効果とレアリティの表示


【名前】 ケンゴ クスイ

【レベル】 1

【生命力】 631 【魔法力】209 【力】410 【魔力】179 【俊敏性】212 

【体力】 348 【魔法抵抗力】209 【物理攻撃力】410 【魔法攻撃力】209 

【防御力】174 【魔防】105

【スキル・魔法】

 ・守護者創造【ユニーク】

 効果:自分の意のままに操れるガーディアンを作り出せる、強さは術者のレベル/魔力/消費魔法力によって変化する


 みんな目の前に表示されたステータスに夢中みたいだ、その気持ちはわかる。

 オレも兵士から聞いたときは素直にスゲェ、地球にいた頃よりよっぽど便利って思ったから、他にもユキシロさん達が集めた情報で。


 ・スキルの中にはダンジョン内の宝箱から入手出来たり、その人にしかない特有(ユニーク)のものがあること。

 ・この世界の住人に比べて異世界の人間は初期ステータスと成長率が高いこと。

 ・人間以外のにも、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族等、多種多様な種族がいること。


 トモヤ君が結構ぐいぐい聞き込みをしてたらしい。

 コミュ力高くて羨ましいな、オレそんなぐいぐい聞きに行く度胸無いからな……じゃなくて、冒険者ギルドで聞いた中で一番肝心な一件を話さないと。


「それと冒険者ギルドの職員から聞いたんだけど、王様が言ってたフェングリフ王国から侵略されてるって話、どうやら嘘の可能性があるみたいだ」


「嘘、ですか?」


 アヤカさんの問いにオレは頷く。


「冒険者ギルドにはそういった情報は入ってないみたいだよ」


「だが、冒険者ギルドの方が嘘を言ってるって可能性だってあるだろ?」


「メリットはなんですか?」


「は?」


「冒険者ギルドがオレに嘘を言うメリットですよ。オレも勿論その可能性は考えました、でも無いんですよ、ギルドがオレに嘘を言うメリットが。ギルドの信条として情報の精度と速度は命と同義と言ってました、そんな中で嘘を言うなんて、ギルドの根幹を揺るがすことになると思いませんか?」


 クスイさんのいう事はもっともだ、でもギルドがオレに嘘を言うのと、王様がオレ達に嘘を言うの、どちらにメリットがあるかと考えれば王様だ、なんせレベル1でありながらステータスが高い人間を引き込めるんだから。


「このことを踏まえて、明日王様の呼びかけに応じるか否かは、自分自身で決めた方がいいと思う。誰かに言われてとか、誰かと一緒になんてやり方で決める様な事じゃない」


 ステータスを見ていた時と違って空気が重いが、こればっかりは自分で決める以外無い、そう思いながらバルコニーに座り考え込む。


「ナナセさん」


 明日以降の事を考えていると、ふとオレを呼ぶ声がして顔を上げるとアヤカさんとユウカさんが居た。


「ん? どうしたの2人とも」


「ナナセさんはもうどうするかを決めたのかなと思って、正直、私達はどうしていいのか、もうわからなくて」


 そうだよな、女の子だしまだ高校生だもんな、そう簡単には決められないよな。なら答えを出すための助言くらいはいいか。


「じゃあ2人に簡単だけど、とても重たい事を聞くよ」


 その瞬間2人が少し緊張するのがわかった。


「王様は戦力を求めてる、何かをする為のね、仮に戦力を求める理由が戦争だったとして……2人は人を殺せるかい?」


 顔色が悪くなったけど仕方ない。


「今2人が考えてること、思ってることが答えなんじゃないかな?」


「……そう…ですね、その通りだと思います。ありがとうございます。あとは自分達で答えを出します」


 そう言い2人は寝室に入っていった。


 王様と会うまでにまだ少し時間がある、実際戦争の戦力として取り込まれれば遅かれ早かれ直面することになる、それなら今指摘してあげるのも優しさだ。


□□□□□□□□□□□□□□□ そ の 夜 □□□□□□□□□□□□□□□□


 カチャっと扉が開く音で目が覚めると、黒い影が物音を立てない様に、ゆっくりと部屋から出ようとしている。

 音を立てないよう首だけ動かすと、本来隣で寝ているハズのクスイさんが居ない、トイレに行くにしては不審過ぎる動きに、即座にあのニヤけ顔が頭に浮かんだオレは、スマホを取りクスイさんが部屋を出たあとで録画状態にする。

 当のクスイさんはゆっくりと別の部屋、ユキシロさん姉妹の居る部屋へ真っ直ぐ進んで行く中で、小声が聞こえる。


「男の部屋に来たんだ、襲わないのは逆に失礼だな」


 何とも自分勝手でゲスな考えだ、反吐が出る。


 最初に不安だからとアヤカさんも言ってたのにこの発言、女性を自分の慰み者か何かと勘違いしてるんじゃないのか。


 そりゃルックスが良くて、女性受けするような性格なら多数から言い寄られるだろうけど、だからと言ってクスイさんが言った事は通らない、余りにも女性を軽視し過ぎてる。

 クスイさんの手がドアノブに掛かった所で録画状態のままライトを付ける。


「あんたのやろうとしてる事は犯罪だぞ、しかも何が襲わないのは逆に失礼だな、だよ」


「んなっ!? テメェ!」


「ゆっくりとその部屋から離れてるんだ」


 この言葉で部屋を離れるクスイさんだが、怒りの視線をこちらに向けて来る。


「音なんて全く出して無かったのに、いつ気付いた」


「扉を開ける時に、カチャって音がしたんで、それで、オレ昔からそう言う音に敏感なんで」


「ッチ」


「このまま寝室に戻って寝るなら事は荒立てない、どうします?」


「どうしますだって? お前今のオレとの位置関係分かってねーだろ」


 位置?クスイさんがバルコニー前でオレが女性寝室の………


「アヤカちゃん! ユウカちゃん! 起きるんだ! このままだと強〇されるぞ!!」


 あぁ、なるほど、つまりはオレに自分がやろうとしていた事の罪をおっ被せるつもりなのか、スマホが明かり代わりだけだと思ってるんだろうか、頭が足りないを通り越して哀れか。


「な…なんですか夜中にいきなり!」


「強〇って一体誰が?」


 困惑しながらアヤカさん、ユウカさんが部屋から出て来る。


「よかった! 早くナナセから離れてこっちに、あいつ、君達の部屋に忍び込もうとしてたんだ!」


「ナナセさんが?」


 アヤカさんが目で本当ですか?と聞いて来た気がしたので、オレは首を横に振る。


「とにかくそいつの傍は危険だから俺の所に」


「一ついい?」


「何だよ強〇魔!」


「あんたが部屋から出るとこから録画してるんだけど」


「……はぁ?」


「だから録画してる、月明かりで部屋も照らされてたし、はっきり録れてるけど?」


「見せてもらってもいいですか?」


「私も」


「ちょ……ちょっと待っ!」


 オレは録った動画を姉妹に見せると、一言ずつクスイさんに言い放った。


「最低」


「屑じゃん」


「ち…違うんだ、本当にこいつが」


「ナナセさんだって言うならこの動画はどう説明しますか? 出来ませんよね? この場で、あの短時間で動画を編集しますか? パソコンも無しに? あったとしても時間的に不可能ですよね? 私でも分かる事をあなたが分からないんですか?」


 鬼のような集中砲火、答えになりそうな物を疑問符でぶつける事で、完全に相手を潰しに行ってる、こえぇ。


「あ……あ…わぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」


 アヤカさんの怒涛のラッシュに耐えきれなくなったクスイさんが寝室に逃げ帰った。


「だっさ」


 追い撃ちでユウカさんの一言も聞こえる。

 どっちもこえぇ。


「とりあえず、オレは寝ずの番であの人を見てるから、2人は安心して……なんて出来ないか」


「流石に眠れないかと思います」


「未遂とは言え、少し先にあんな人が居る状態じゃあね」


 分かる、逆の立場ならオレだってそうなるだろうし。


「まあ無理に寝ようとせず、体を横にするだけでも楽になるから、ベッドで休むといい」


「そう…ですね。お願いします」


「ああ」


 大事にしないって言ったのに、自分から大事にして自爆とか、スマホ構えてるんだから録画してるって分からんかね。

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 寝ずの番をして迎えた朝、リビングの方から人の気配がして出て見ると、ユキシロ姉妹が起きていた。


「おはよう。随分早いね」


「おはようございます、ナナセさん。早いと言うより眠れてないですから」


「あれからずっと、姉さんと横になって話してただけだもんね」


 こんな訳分からん事に巻き込まれて、夜には寝込みを襲おうとしてる奴が出たら、寝れる訳ないよな。


 その後は朝食を終えて、昨日の大臣が迎えに来るまで、クスイさんは一切部屋から出て来る事はなかった。

 そして昨日と同じ謁見の場に通されるオレ達。


「では、皆集まったところで昨日の返事を聞かせてもらえぬか」


 その言葉に真っ先に名乗りを上げるトモヤ君


「オレは力を貸しますよ、お姫様とも約束したんで!」


 いつの間に出会ってたんだろう、本当にコミュ力お化けだなキミ


「オレも構わない、ただし、色々と優遇してくれるって話ならだけど」


 クスイさんも貸す側か、しかも優遇してくれって、なにか考えがあるのか……こういう場面でのその発言は余り良いイメージが湧かないが人それぞれだ。


「2人の協力に感謝する、そちらの3人はどうだろう」


「すみませんがオレは力になれそうもありません。正直、人を殺すという事に踏ん切りが付きませんから、どこかで狩りでもしてひっそりと暮らしていこうと思います」


 丁寧に人に対して云々言ったが、正直戦争なんて面倒事にマジで巻き込まないでほしい、相手の命の責任なんて背負いきれないし、背負いたくもない。

 あとはユキシロさん姉妹だが


「申し訳ありませんが王様、私達もお力にはなれません。元の世界で私達は争いとは無縁の場所にいました、いきなり人と戦うなんて出来ませんし、私自身したくありません」


「……わかった。まことに残念ではあるが致し方ない、アレを3人に」


 王様の一声で、宝石で装飾された台に3つの袋が載せられてきたが、ナニコレ。

 取らずに3人で顔を見合わせていると


「その中に当面の資金を入れてある、どうか受け取ってくれ」


 テキトウに素手で魔物を狩ろうと思っていたし普通に助かる、これで装備や食料なんか賄える。

 袋を受け取り感謝の言葉を述べて、オレとユキシロさん達は城を出た。


「さて、オレは冒険者ギルドに登録して魔物退治をしつつ、元の世界に戻る手段を探すつりだけど、2人はこれからどうするの?」


 窮屈だった城を出て大きく伸びをしながら聞いてみた。


「元の世界に戻る方法なんて本当にあるんですか?」


「わからない、でも呼ぶ方法があったんだ、戻る方法だってあるかもしれない、そして戻れない事も考えての冒険者登録さ」


 元の世界に戻れても戻れなくてもここでの生活費を稼がないとならないし、それなら戻る手段を探しつつ稼げる冒険者が手っ取り早い。


「あの! 私達を仲間に入れて貰えませんか? もちろん魔物とも戦えるようにがんばりますから! 姉さんもいいよね?」


「もちろん、どうせ行く当てもないんだし、何も知らない世界で女の2人旅なんて、変な連中に狙って下さいって言ってるようなものだしね」


「それはいいんだけど、でも戻れない事も覚悟しておくようにね」


「「はい!」」


「じゃ、そうと決まればまずは服屋を見に行こう、さすがにこの服装のままじゃ目立ち過ぎる」


 貰った袋の中には金貨が10枚入っていた、この世界のお金の価値は露店や日用品、宿代なんかで身に着けていくしかないな。


 城門から歩いて街に向かうと、見慣れない服装のせいか、すれ違う人達にジロジロと見られる、悪意とかが無いのは分かっていても余り気分のいい物じゃないな。

 急いで服屋を探したいけど、何処に何があるのかまったく分からないし、人に聞こうにも、話しかければ逃げるか避けられるのどちらかで、文字通り行き当たりばったりだ。


 そんな中で人通りの多い方に歩を進めて行くと、徐々に店が見え始めてくる、露店に売られている商品の価格を見ながら、商店街らしいところを歩いていると、ユウカさんが服屋らしき店を見つけてくれた。

 店員さんに冒険用に丈夫で動きやすい服を見せてもらい、オレはその中から体温維持も出来そうな紺色で所々白のラインが入ったコートと上下のセットに決める。

アヤカさんユウカさんはどうかな。


 アヤカさんは動きやすいノースリーブのようなシャツに、プリーツスカートを合わせたような服装。

 ユウカさんはスリムズボンにコールドショルダーのような服にしたようだ。

 予備の服も購入しそれぞれ金貨を1枚づつ出すと、店員さんが釣銭に困っていたのでオレがまとめて払うことに。

 元々の服は持ち帰ることにして、後でアヤカさんがストレージ・スペースに保管してくれるとの事、凄まじく便利なスキルだ。


 内訳:ナナセ銀貨7枚 アヤカさん銀貨9枚 ユウカさん銀貨9枚の合わせて大銀貨2枚と銀貨5枚(ナナセは3日分、アヤカ・ユウカは4日分の服を購入)


 ついでに服屋の店員さんに質の良い武器を扱ってるところを聞いてみるか、じゃないと無駄に時間だけ過ぎるからな。


「ちなみにここで腕の良い武器屋って分かりますか?」


「武器屋かい? なら少し外れになるが、噴水広場から道なりに東に行くと、武器も防具も扱ってる良い店があるよ」


「噴水広場から東にですね、ここに来たばかりなので助かりました、ありがとうございます。」


店を出たあと、店員さんから教えて貰った通りに向かう道中で2人に聞いてみる。


「アヤカさんとユウカさんは、どんな武器にする予定?」


「私はどんな武器がいいかしら、ユウカはステータス的に杖にするの?」


「うん、ファンタジー物の本とかだと、魔法の威力を上げる杖やロッドがあったりするし、何より、私が剣や弓を扱いきれる自信ないから」


 そうしたらユウカさんはサポート兼固定砲台として戦う感じにするのかな、ステータス的にアヤカさんは剣も魔法も高レベルで出来そうな感じだけど。


「アヤカさんの魔力干渉スキルに合わせて使うなら、弓とかの遠距離武器とかかな、今まで弓とか使ったことってある?」


「いえまったく、それどころか私こう見えても剣道部なんです、ナナセさんもスキルに剣術とあるので、剣に関わることをしていたんですよね?」


「祖父がね、初孫ではっちゃけて大学に入るまでみっちり叩き込まれた。まぁそれが嫌になって大学は遠くのしたんだけど、でもこういう世界だと大体剣って西洋剣が多いから、そうなると使い方が違うからなんともね」


「正直、姉さんとナナセさんの武器は工房行くまでわかんないね」


「そうね」

「だねぇ」


 そんな話をしながら工房へとやって来た。

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