第12話 彼女がいたことがない

私のような男でも見栄というか恥というか、そういうものがあるようで、あんまりこういうことは言いたくないのだが言っておこう。


私は女と付き合ったことがない。


彼女いない歴49年で、彼女がいるという感覚が分からない。

どう考えても誇らしいことではないし、まともに年輪を重ねた男とはみなされないであろう。

女と付き合って、ハメ合ってる奴なんか高校生や中学生でもいるんだから、私はその点で彼ら以下だ。


女が嫌いというわけではない。

これまで好きになった女は何人もいるが、向こうがそうではなかったというだけだ。


私は不思議に思うのだが、世の中にはそこら中にカップルがいて、彼らはくっついてハメ合っている以上お互い好き合っているってことのはずだ。

私には経験上お互い好きという状態が起こることが信じられない。

そんな奇跡ってかくもたくさんあるということだろうか?


あ、それか最初はそうでもなかったけど、だんだん変わってきたってことなのか。

いずれにせよ私にとっては永遠の謎である。


「お前は臆病だから」とか「アタックしなかったから」とか言ってくる奴もいるが、私だって何も行動しなかったわけではない。

彼女が欲しくて仕方がなくなった時期もあった。

でも、そもそもこれまで会った女は私を異性として見てくれないし、露骨にキモい奴と拒絶されてばかりだったんだから仕方がない。


それでもアタックしたことが二回くらいあったんだが、どうなったと思う?


一回目は警察に通報するとまで言われてそれでもめげずに行ったら、翌々日いきりたった彼氏とその友達を連れてこられ、殴られてしまった。


二回目はアルバイトしていた居酒屋での飲み会の席だったんだが、そこそこ好意を寄せていた女が酔っぱらって私に抱きついてくるという幸運があった。

誓って言うが、私はそれに乗じて何ら行為を行ったわけではない、決して。

抱きつかれたから抱きしめただけだ、それ以上のことはしていない。

だが翌日、その女は私にいやらしいことをされたと騒ぎ出し、強制わいせつで訴えると涙まで流して言いやがったのだ。

店長はじめ他の人間が何とかなだめてくれたが、私の顔はもう見たくないとその女はバイトを辞めてしまった。


私は女に近寄るのが怖くなってしまった。

そんなことされても行くべきなのか?


そりゃ確かに私は女から見て異性としての魅力がないキモい奴な上に社会不適合者だ。

女たちには見る目があったんだろうな。


それでも「いつかお前にもピッタリな人がいる」だの、「たで食う虫も好きずきだから」だの見え透いた気休めを言ってくれた者はいた。

でもホント気休めだった。

未だにそんなのいないんだもの。


赤い糸で結ばれた運命の人?

もはや私にはそんなのに出くわすのは、ヒマラヤで雪男に遭遇する確率よりもっと低いと言わざるを得ないだろう。







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