大事なことを変えるには強い動機が必要

 魔法が使えなくなり飛べなくなる→飛べるようになる


 どうすればこの流れをスムーズに持って来れるでしょうか。

 それは「飛ばないといけない」という状況を作り出せばいいのです。

 実際にはここのシナリオは一行で書けます。


 飛行船にトンボがつかまったまま宙吊りになり、それをキキが助ける。


 ここで重要なポイントがいくつかあります。

1 キキでないと助けられないということ

2 簡単にはいかないということ

3 助けるための強い動機があること

4 被害者は巻き込まれている(自分のせいではない)

(・事件に自分なり自分に準じた人物の行動が関わっていること)


 これらが弱いと印象がぼんやりしてしまいます。

1 キキでないと助けられない

→他に優秀な救助隊がいて、助けられるならキキが行く必要がありません。なのでそういった人はいない方がいいです。もしくはいてもなんらかの理由で助けられなかった、などとする必要があります。

 まわりも驚いていて「どうしよう、もうだめだ」となっている方がいいです。


2 簡単にはいかないということ

→簡単にできてしまっては感動は薄くなります。飛ぶのは命懸けで危ない行為だからいいのです。


3 キキが助けるための強い動機があること

→助けるだけなら誰でもよかったわけです。たとえ知らない子どもであってもキキは助けにいったでしょう。ただトンボという知り合いであればもっとその動機は強くなります。


4 被害者は巻き込まれている(自分のせいではない)

→トンボが遊び半分でふざけていて巻き込まれた場合、応援したい気持ちが薄れてしまいます。あくまで飛行船が飛ばないよう必死にしがみついていたら巻き込まれてしまった、という設定がいいわけです。


(・事件に自分なり自分に準じた人物の行動が関わっていること)

→今回は描写されていませんが、私が考える追加のポイントです。本作は事故に巻き込まれたという設定ですが、元々は起きるはずのなかった事故が自分(キキ)のせいでおきた、もしくはトンボが元気のないキキを励まそうとやろうとしたことで、事故に巻き込まれる、などの演出があると、キキが助けに行かなきゃ、という動機はもっと強まります。


【肉付けも忘れない】

キキ「男の子は無事ですか?」

男「さあ、パトカーは落ちたって効いたけど」


アナウンサーが良い「振り」をします。

「一体、どうやって助ければいいのでしょうか! このまま勇敢な少年を見捨て……」


 ここでキキが飛んできます。

 届きそうで届かない、でもお約束のぎりぎり助ける。

 このハラハラ感がたまりませんね! ラピュタの空から落ちてきた少女を彷彿させる構図ですね。手をつないだ瞬間は何回見ても思わず心の中で拍手をしてしまいます。


 消防隊のトランポリンがぎりぎり間に合うというのも大事ですね、もうすでに間に合っていたらキキの必要性が低くなりますからね。


 こうして見事に感動的なフィナーレを迎えることになりました。

 本当に素晴らしい作品です。

 噂ではこの救出劇は映画オリジナルだとか。原作も読んでみたくなりますよね。


 総じてラピュタもそうですが、このジブリ作品には特筆すべき点があります。それはかなり高度な技であり、それができるからこそこの作品は子どもから大人まで多くの人に受け入れられる作品となっているのです。


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