最大の試練は徹底的に!

「キキ、魔法が使えなくなる!」


 この演出が絶妙ですよね。試練にも色々ありますが、魔女の大前提である魔法が使えなくなる、一大事です。飛ぶことしか取り柄が無かった人が、飛ぶことすらできなくなる。この一大事の緊迫感を増すために色々と工夫が隠されています。


<ひっぺがし>

おソノ「でも魔法って戻るんでしょ」

キキ「ほとんどの人が2週間以内に戻るってことは知ってるんだけど」


 これではたとえ事実であっても、緊迫感がありません。


<正解>

おソノ「でも魔法って戻るんでしょ」

キキ「わからない」


 どうなっちゃうんだろうと思います。さらにもっとインパクトのある事実がありました。それが


「ジジの言葉がわからなくなる」


 これは見ている人に強烈に届きました。大丈夫なの? これ……。と。さらにおまけの演出でほうきまで折れる、本当にこれはまずいぞ、と思わせるのです。


※キキの声が聞こえなくなるのには色々説があるようです。興味がある方はネットで検索してみてください。直後では「ジジの言葉がわからなくなっちゃったみたい」と言っているので、原因は魔法の力が弱まったキキ側にあると考えるのが普通ですが、最後のシーンでもジジの言葉はわからないままです。


【極限まで追い込まれるから人は動く】

 ここでキキを追い込む手を緩めては名作はできなかったでしょう。トトロでもありましたが、どうしようもなくなって、人は初めて誰かを頼ったり、自分を改めて見直したり、今まで気づかなかったことに気づいたりするのです。

 調子がいい時に絵描きさんと再開しても大したことはなかったかもしれません。しかし、この絶対的に追い込まれた状況だったからこそ、キキは絵描きさんの家に泊まり、話し、自分を見つめ直すきっかけとなったのです。


<ひっぺがし>

 絵描きさんと話して、魔法が使えるようになりました。


 とはいきません。まだまだ解決はクライマックスにとっておきます。ホップステップジャンプで言えば、ホップのところです。そして畳み掛けるようにステップにあたる別の人物がアプローチをしてきます。


【青い屋根の家に住む奥様】

 奥様の依頼はケーキをとある人物に届けてもらうこと。キキは飛べなくなったから届けられないと言っているのにどうしても届けて欲しいと依頼する。その相手は他ならぬキキ自身。奥様は作ったケーキを感謝の印としてキキに届けたかったのです。お客様から感謝してもらったことを知り、自信を失いかけていたキキはさらに勇気をもらいます。


<ひっぺがし>

 みなさんのおかげでまた飛べるようになりました。


 では終わらないのがこのお話。

 ここまででホップ、ステップと飛び立つための助走は十分に整いました。あとは最後、ジャンプまでの1ピースです。


【窮地になりましたが、治りましたーではダメ】

 せっかくここまで準備は整いましたが、最後、魔法がまた使えるようになるにはそれなりの強い動機が必要です。ここが弱いと、


「あんなに苦労してたのに、意外と簡単に戻ったな」


 となってしまうからです。


 さあいよいよクライマックス。どのようにして、感動のフィナーレへ展開していったでしょうか。

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