2人の関係に変化が
トンボとの関係に変化が訪れます。きっかけはパーティの招待状です。トンボがキキをパーティに誘いに来たのです。ここの演出も実にうまくできています。反応としては通常
A:行きません、知らない人の誘いなんて。とつっぱねる
もしくは
B:ほんと、うれしい!
完全につっぱねてしまうと、その後の展開がありません。
一方で、すぐ受け入れてしまうと、
「今まで避けてたのに……?」
となってしまいます。
ここではどうしたでしょうか。
<正解>
え? と驚いた表情だけ示す。
ここで答えを出す間があってはいけないのです。ここではキキは答えられないはずなのです。なぜならあれだけ嫌っていたのに、でもパーティには行ってみたい、返事に迷ったはずです。迷っているのを待ちかねて、トンボが出ていくという設定もあったでしょう、実際はどうしたでしょうか。
<正解>
答えを出す間もなく、新たなお客に阻まれ、トンボ帰らざるをえなくなる。
キキが答えなくてもいいように、別のイベントを入れ込んだわけです。しかもその後に、心を許しているおソノさんには「どうしよう」といいつつすごく嬉しがっていることを見せます。これにより、キキは行きたいんだな、ということがわかります。そして、行こうという気持ちを持っていることがわかります。
しかしここでフラグと言われるものが立ちますが、仕事が2つも入っていて、パーティには遅れちゃいけない、というフリが入ってきます。
【バランスを取る】
ここでジジがナイスなコメントをしています。
このでのキキの行動は観ている人に対し不自然感を出してしまう可能性のあるシーンとも言えます。「あんなに嫌っていたのに行くの?」という理由です。
そんな時に役立つのがこれです。ジジのセリフを覚えているでしょうか。
ジジ「あんなにあのこのこと怒ってたのにパーティにいくの〜?」
このように逆の意見を入れることで、バランスを取っているのです。このような逆の立場の人間を置くことでバランスをとるこの逆の立場の存在のことをアンチテーゼと呼んでいます。
【やはり試練】
先に答えを言ってしまうと、この仕事が簡単に終わってしまってはいけないのです。
<ひっぺがし>
荷物もしっかり届けられて18時に間に合った。じゃあパーティに行きましょうか。
これを誰しもが望んでいたはずです。
しかし、2人の関係をより近づけるために、またもや試練を入れるのです。つまり「パーティに行けない」という展開を作らなければなりません。
それは15分遅刻、なんていう小さい理由では観ている人は納得しません。キキはすごく行きたいんだけど、何らかの強い理由でそれが出来ないと思わせなければなりません。ではその理由は何だったでしょうか。それは
・色々トラブルがあって遅刻
だけではなく
・突然降ってきた雨にずぶ濡れ
だけでもなく、
・大事にしていた贈り物を受け取った孫がそれを見て「私これ嫌いなのよね」とはっきり言う。
せっかく必死になって届けた大事なものを踏み躙られた、心がキュンと痛むシーンですが、この苦しいシーンを書けるかどうかが、プロかどうかの違いだと思います。このショックがあるからこそ、キキは凹み、とてもパーティどころではない、という心理状況に陥ります。逆にそこまでしないとキキが諦める、という行為には繋がらなかったのです。
でもここで重要な意味を持つのが、
「キキの都合で、トンボを待たせてしまった」
という事実です。先ほども書いたように、心のみで印象を変えて2人を近づけるのはかなり難易度が高いです。それをやってのけたのはこういう状況をつくりだせたおかげなのです。つまり、キキはトンボに「借り」ができてしまっているのです。キキがずぶ濡れで帰って来た時にもおソノさんが
「あの子、ずっと待ってたのよ」
と言うことで、その借りを明確にしています。そんな状況にも関わらず、トンボは熱発したキキのことを思いやってくれる。そのことがキキの気持ちをトンボに近づけることにつながっているのです。
改めて観てみると、このお話の展開の素晴らしさには脱帽ですね。非常に勉強になります。
そしていよいよやっとキキとトンボが心を許して話ができる時がやってきます。
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