第10話 既婚者は魅力的
4月 水曜
「守、おはよー」
「おう、おはよう」
今日は一緒に登校できた。僕が寝坊しなかったということだ。
「昨日さ、新聞読んでてさ、あのーお悩み相談のコーナー読んでたのよ。それで不倫相手と結婚してできた子供だって言うのを子供本人たちに言うべきか迷ってるって話だったの」
「随分と重い話だね」
そう言うと守の顔は渋柿を食べたような渋い顔をした気がした。それでも僕はお構いなく話を続けた。
「そうなの。で、その人は女性で旦那さんから殴られてるらしい。でも不倫で結婚した訳だから我慢してるんだって。何がヤバいかってその旦那さんには家族もいたのに相談してきた女の人と不倫して結婚して子供まで作っちゃうっていう所。わがままにもほどがあるよな」
僕がそう言うと、守は
「わがままっていうかなんて言うかわかんないけど、その女の人、図々しいね。よくないわー」
と返した。やはり渋い顔をしていたのは気のせいだったようだ。学校に近づいてきても不倫の話をしていたら木村さんが声を掛けてきた。
「おはよー!ん?なんの話してんの?」
僕は今まで守と話していたことをこれこれこうなんだどう思うかと聞いた。
「あたしさ、心理学とか好きなんだけど異性は既婚者だと魅力的に映るらしいのよ。あたしらはまだ高校生だからその感覚はわかんないけどね。この前お母さんとお母さんの知り合いの飲み会に付いていったらね、5人中3人は不貞行為したことあるって言ってた」
「マジかッ!」
僕と守は思わず大きな声で叫んでしまった。木村さんは続けて
「あと子供に言うかだっけ?言わないかな。だって親が不倫して生まれたのが自分なんて知ったら辛いし恥ずかしくて生きていけないなー」
なるほど、なるほど。僕と守は感心していた。すると校門のすぐ横の茂みの中で夏野先生と秋田先生がイチャイチャちゅっちゅっしているのを見つけてしまった。夏野先生は社会担当の男の先生で結婚済みだ。その日の昼休みに倫理担当の先生に『既婚者は魅力的に見えるのは本当か』を質問すると『そうだ』と帰ってきた。人間の心理は面白いと思った日だった。
モヤモヤときっぱりと 広川 海未 @umihirokawa
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