第5話 無駄はたまに役に立つ

4月 水曜

5限の国語はヤバい。眠すぎるのだ。僕は爆睡していた。そしたら廊下から大きな声が聞こえてきた。

「先生ッ!なんで古典とか漢文とか勉強するんですか!意味わかんないです」

大きな声は田中だった。国語の亀谷(かめや)先生に向かってブチぎれていた。今日は番号順に平家物語を覚えて先生に発表する授業だったのだが、どうやら田中は納得がいかないようだ。

「平家物語なんて将来使ってる人見たことないですよ!まぁ博物館の人とか古典の研究してる人とかは使うかもしれないけど僕はそういう仕事には就くきないですし、なのになんでこんなことわざわざ覚えて発表してね、成績も良くないなんて時間の無駄でしかないでしょ」

そう言い放つと田中は教室に入ってきて自分の席に戻った。すると亀谷先生も入ってきてこういった

「そう。古典なんて先生も授業以外使ったことないです。はっきり言いましょう無駄です。でも学校ってのはね、自分の得意・不得意を見つけるところなんです。いいですか?ここで自分の得意・不得意を見つけないと将来フワフワした人になる可能性が高いです。なんでもいいから自分の得意を見つけてほしいのです。納得できましたか、田中君」

田中は半分納得、半分不服の顔をしていた。この日はこの話をしたおかげで5限は潰れた。

15年後・新聞にて『田中博士、壇ノ浦から平家のものとみられる物発見か! 田中先生はこう語る。学生の頃に読んだ平家物語が役に立ちましたね。』

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