歴史博士、マサカの間違いをする

ライオネル

第1話

 「黒歴史放出祭」なる面白そうなものが開催されていることを知りました。これは参加するしかないということで、私の黒歴史をご紹介させていただきます。過去にあった恥ずかしい出来事ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。


 小学6年生の頃のこと、当時の私は歴史博士と呼ばれていました。クラスメイトが誰も知らない知識を持っていると、○○博士と呼ばれがちですよね。私も同様に、日本史においてそのような扱いを受けていました。社会科の授業はいつも敵無しの独壇場。先生は教科書にも載っていない話をよくしたのですが、私だけが付いていくことができました。「すごーい」とクラスメイトからの尊敬の眼差しを受け、私は完全に有頂天になっていたと思います。この後に起こる悲劇も知らずに……。


 とある日の社会科の授業中、先生が一問一答形式で問題を出してきました。もちろん私だけでなく、他のクラスメイトも解答できます。問題は先生が黒板に書き出し、挙手して指名された生徒が答えていくという流れ。私は自信があったので、問題を確認せず適当に手を挙げていました。そして、割り当てられたのは10問中の6問目。やれやれ感を出しながら、黒板の前に立ちました。


⑥GHQの最高司令官として、戦後日本の占領政策を進めたのは誰?


 初めて問題を確認した私は、その場で動けなくなりました。偉人の顔も浮かんでいたし、答えも2択まで絞れている、だけど確証が持てなかったんです。今まで正しいと思っていたことでも、いきなり疑心暗鬼になってしまうことがありますよね。正にそれが起きている状態でした。

 他の問題を答えているクラスメイトは、すらすらと文字を書いていきます。その中でチョークを持つ右手が動かない私。しかし授業時間は有限なので、そろそろ書かなければいけませんでした。私は覚悟を決め、解答しました。


 答え合わせの時間、先生が順番に赤丸をつけていきます。1問目、2問目と進む中、私は祈るような気持ちでその光景を見ていました。心臓の動きが早く、体は若干火照っている感覚。そして5問目が終わり、とうとう私の番が来ました。


「さて次は……おっ!?」


 ここまで全問正解で、勢いのあった先生の動きがピタッと止まりました。私は完全に察しました。やってしまったんだと……。


黒板に書いた答え:マッサーカー


 ざわざわする教室で、私は素知らぬ顔をしていました。どうにかして誤魔化せないかと、そればかり考えていたんです。が、こざかしい抵抗もあえなくばれました。しかも「さすが歴史博士、ボケるのも上手いなあ~」という先生のフォローまでついてきました。それに対して「ま、まあ(震え声)」と強がりしか言えなかったです。


 ちなみにこの後、クラスから歴史博士という呼び方は消え去り、新しくマッサーカーというあだ名が加わりました。サとカの位置を間違えただけなのに(泣)。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

歴史博士、マサカの間違いをする ライオネル @Lionel18

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画