第220話 過去編 ハーデス王国国王


~過去~


まだ人間だった頃の冥王は、ハーデス王国国王として、王城の執務室で書類を処理していた


「ふぁ~…なぁセバス…そろそろルイに王位を譲ろうと思っているんだが、良いと思うか?」


冥王は、眠そうに書類を処理しながら、部屋の隅でお茶の準備をしているセバスに声を掛けた


「っ!駄目に決まってるじゃないですか!ルイ王子はまだ16歳ですよ!!」


冥王に声を掛けられたセバスは、お茶の準備をしている手を止め、冥王の方に振り返り、書類を処理している冥王を見ながら答えた


「ちっ…この堅物め…俺は良いと思うんだがな…」


セバスに否定された冥王は、舌打ちをしながら書類を机に置き、小声でセバスの悪口を言った後、残念そうに窓の外を見た


「陛下、今何か言いましたか?」


悪口が聞こえたセバスは、窓の外を見ている冥王を睨み付けながら、威圧しながら質問した


「い、いや、何も言ってないぞ!!」


セバスに、威圧されながら質問された冥王は、慌てて否定した


「はぁ~…陛下はまだ、王位を継いでから、3年しか経っていないじゃないですか…せめて、後30年は王でいないと」


セバスは、溜め息を吐いた後、お茶を机に置きながら、後30年は王位に居続けべきだと伝えた


「…だがな、ルイの奴は、王になる事を夢見ているんだぞ?一族の歴史上、数少ない、王位を望む子だ…ならさっさと王位を譲るべきだろ?」


セバスに、後30年は王位に居続けるべきだと言われた冥王は、お茶を飲みながら、逆にルイに王位を譲るべきだとセバスに伝えた


「しかし、まだルイ王子には、国を引っ張っていけるだけの力がありません…最低でも、戦場を経験し、兵士達と騎士達の命の重さを知っていただかないと…」


冥王の話を聞いたセバスは、冥王の机にお茶請けを置きながら、少し言いづらそうに、戦場を経験させるべきだと伝えた


「そうだな…俺もルイには戦場を経験させて起きたいが…」


セバスに戦場を経験させるべきだと言われた冥王は、机に置かれたお茶請けを食べながら、悩んだ様子で机の上にある書類を見た


「…ハーデス王国と戦争する国は、今は無いですからね」


セバスは、冥王が見ている書類に書かれた、軍費削減という文字を見ながら、諦めた表情を浮かべた


「「はぁ~~」」


セバスと冥王は、書類に書かれた軍費削減の文字を見ながら、悩んだ様子で、深い溜め息を吐いた



コンコン「…父様、ルイです」


冥王とセバスが、悩んだ様子で、軍費削減の書類を見ていると、冥王の息子のルイが部屋のドアをノックした


「(っ!セバス!隠せ!!)」


「(分かってます!!)」


ルイの声を聞いた冥王とセバスは、ルイに見られないよう、慌てて机の上の書類を隠し始めた


ハーデス王国には、国王と先代国王以外のハーデス家の者に、国の重要な書類を見せてはならない決まりがある



「(…よし!これで大丈夫だな?)」


「(はい!)」


「…入って良いぞ!」


書類を隠し終えた冥王とセバスは、書類をしっかり隠せたか最終確認をした後、冥王は椅子に座り直し、セバスは冥王の後ろに控え、部屋の前にいるルイに、部屋に入る許可を出した


ガチャ「失礼します」


部屋に入る許可を貰ったルイは、ドアを開け、お辞儀した後、部屋に入った


「…それで、今日はいったいどういった要件だ?」


ルイが部屋のドアを閉めたのを確認した冥王は、ルイの顔を見ながら質問した


「…先程、エルフの王家から手紙が届きました」


冥王に質問されたルイは、懐から手紙を出し、冥王の机の前まで行き、手紙を冥王に手渡した


「…うむ…ルイ、ご苦労だった…下がって良いぞ」


手紙を受け取った冥王は、差出人の名前を読んだ後、優しい表情でルイを労った後、真剣な表情で部屋を出て行くよう伝えた


「っ、分かりました、では失礼します」


冥王の真剣な表情を見たルイは、驚いた表情を浮かべた後、少し慌てた様子で部屋を出て行った



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