第180話 イカれた一族



「セイ!今すぐ魔力を抑えるのじゃ!」


「っ!」


冥王に言われ、セイはその場で座禅を組み、魔力を抑え始めた



「さて…セイは何を読んだんじゃ?」


セイが魔力を抑えている間、冥王はセイ読んでいた資料を確認し始めた


「っ!そうか…これを読んのか…」


資料を見た冥王は、悲しい表情を浮かべ、静かに資料を机に戻した




魔力を抑え込んだセイは、座禅を組んだまま、冥王を見上げて質問した


「ねぇ冥王様…普通、終焉の一族みたいな存在って、ハーデスが動く前に、被害者遺族の復讐で、滅んでいてもおかしくないよね?」


「普通なら、そうなっていた筈なんじゃが、終焉の一族は、ハーデスが動くまで、その存在を知られておらんかったのじゃ」


「…成る程、周りと関わりが薄く、被害者も死んでるから、誰もその存在に気が付かなかったんだ」


「もし知られておったら、ハーデスが動くより前に、確実に滅んでいたじゃろうな」


「よし!滅んた一族の事を気にしても仕方ない!違う事でも調べるか!」


セイは気分を変える為に、大きめの声を出しながら立ち上がり、違う資料を読み始めた



「(終焉の一族…当時のハーデス国王の妻と子を殺し食らった後、子の骨を国王に送り、新たに子を要求したイカれた一族…当時の国王は怒り狂い、ハーデス一族のみで滅ぼした…終焉の一族の者達は、戦いの最中、『我らの糧となれ!我らと共に終焉に向かうのだ!』と笑い、戦いの最中でも終始相手を食おうとしていたか)」


セイが違う資料を読み始めたのを見た冥王は、机に残っていた資料を、複雑な表情で読んでいた






「はぁ~仕方ない、調べ直すか…」


日記を触りながら、城の図書室で読んだ資料を思い出していた冥王は、ため息を吐きながら日記を閉じた


「それが良いと思うよ…下手すれば、魔獣教の教主って奴は、終焉の一族の生き残りかもしれないし」


「そうじゃな、可能性はあるのぅ」


「それに、冥王様は早めに城に戻ったほうが良いと思う」


「ん?なぜ…っ!そうじゃな!今すぐ戻らねば!レイが危険じゃ!」


「ちょっ!冥王様!」


セイと話していた冥王は、自身の留守中に、教主が首都ロイを襲う可能性を考え、セイが止める間もなく、日記を持ったまま、首都ロイに出発した


「…せめて、日記は置いていって欲しかったな…はぁ~」


凄いスピードで、空を移動している冥王を見て、セイは、ため息を吐きながら王宮の中に入って行った




「サクア!出発を早めるぞ!2日後には出発する!」


王宮に入り、会議室に着いたセイは、部屋に入って直ぐサクアに声を掛けた


「あっ!はい!えっ!?そんなに早くは無理ですよ!クロスに引き継ぎをしないと、いけないんですから!」


セイの言葉に、最初は驚き返事をしたサクアだが、慌ててセイに近づき、無理な理由を話した


「ちっ、クロスめ…仕方ない、なら俺1人で林王に会いに行く!」


セイはサクアと共に行くのを諦め、1人で行くことを伝え、さっさと部屋を出て行こうとした


「「「「ちょっ!セイ様!お待ちを!」」」」


部屋を出て行こうとしたセイを、アナベル達は慌てて止めた



「今!セイ様が居なくなるのは困ります!」


「そうです!トーカスにはセイ様が必要なんです!」


「出来れば、トーカスが安定するまでいて下さい!」


「「「お願いします!暫くはトーカスにいて下さい!」」」


セイを止めた、アナベル、アティア、サーチェの3人は、セイの前まで行き頭を下げた



「…すまんな、俺も最初は、トーカスが安定するまで居るつもりで居たが、事情が変わった」


頭を下げる3人に、セイは申し訳なさそうに話した



「その事情とはいったい?」


「それは…」


セイは、アナベル達に、自身が知っている、終焉の一族と魔獣教の事を説明した



「…それなら、止めることは出来ませんね」


「そうね、トーカスだけの問題じゃないもの」


「魔獣教は、世界規模で動いている可能性が高いからね」


「悪いな」


アナベル、アティア、サーチェが納得したのを確認したセイは、同じ話をヒナイト達にする為に、隠し部屋は向かった







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