第174話 ボルドの隠し事



「さてセイ、セイがトーカスに戻る時は、儂も着いて行くからの」


セバスが尋問室に向かって直ぐ、冥王はセイの方を向き話した


「俺は良いけど、他の人達が止めると思うよ?」


「大丈夫じゃ、ハーデスの家臣の為に動くのじゃ、誰も文句は言えん」


「そう、なら良いけど…」


冥王の自信満々の様子に、セイは少し困りながら答えた



「あぅ~あ~くぅ~!」


「おっと、どうしたレイ?」


セイに抱っこされていたレイが、いきなり暴れ出し、セイは慌ててレイを見た



「お腹が空いたのよ」


「なら、シスターの所に連れてかないと」


セナがレイが暴れた理由を伝え、セイはマーサの所に向かおうとした



「いえ、すぐマーサさんがこちらに来るので、向かわなくても大丈夫ですよ」


「レイ~そろそろご飯よ~」


マーサの所に、向かおうとするセイを、サーシャが止めると、ちょうどマーサがテラスに来た



「セイ、レイを渡して」


「あっはい、どうぞ」


マーサの有無を言わせない口調に、セイは困惑しながら、レイをマーサに渡した



「では、レイにご飯を上げてきますね」


レイを受け取ったマーサは、直ぐにテラスから城の中に入って行った



「ねぇ母様、なんかシスター、感じ変わったよね?」


マーサが城に入って行くの見ていたセイは、昔のマーサとは少し違うと感じ、セナの方を見て質問した



「当たり前よ!マーサちゃんは母親に成ったのよ?母親に成った女性は強くなるの!」


「そ、そうなんだ」


セナの力強い言葉に、セイは困惑しながら返事をした


「はぁ~特に、家にいない父親の代わりもしているマーサちゃんは、より強くなってるわね」


困惑しているセイを見たセナは、嫌味を混ぜながら、セイに話しかけた


「いや、俺も出来れば一緒に居たいけど、魔獣の王に会いに行くのも大切だから…」


セナの嫌味にセイは弱々しく反論するしかなかった



「さて、儂らもご飯にするかの」


「では準備しています」


セイとセナの話に、巻き込まれたくないと思った冥王は、近くにいるサーシャと共に、素早くテラスから城の中に入って行った



冥王とサーシャが城の中に入った後も、セナとセイは、テラスで一方的な言い合いを続けた




セイがボルド連れ、首都ロイに戻って来てから3日がたった


セイは2日の間、将軍や冥王と模擬戦をしたり、魔獣を人に戻す為に、黒い獣と戦ったり、レイと共に散歩をしたり、充実した毎日を送っていた



「あぅ~!あ~!」


「レイは朝から元気だな~」


「セイ、ボルドがようやく吐いたぞ」


3日目の朝、セイがレイと共に庭を散歩していると、テラスから冥王がセイの声をかけた


「本当!ならそっちに行くよ!」


セイはレイを連れ、テラスに居る冥王の下へ向かった



「それで、ボルドは何を隠してたの?」


テラスに着いたセイは、直ぐに冥王の横まで行き、ボルドが隠していた事を聞き始めた


冥王は、真剣な表情で話し始めた


「うむ、あやつは魔獣教とかいう、変な宗教の1人らしい」


「魔獣教?何それ?」


「魔獣の祖を神と崇め、この世に生きる全ての者が魔獣に成るべきだと考えている変人の集まりじゃ」


「はぁ?馬っ鹿じゃないの!魔獣になりたい奴なんて、不老を求めるアホか、楽に力を求めるクズぐらいでしょ!」


冥王の話を聞いたセイは、魔獣教の考えを馬鹿にした表情で、バッサリ切り捨てた


「儂もそう思うが、ボルドの話じゃ、教主と言われておる奴は、魔獣の王と戦えるだけの力を持っているらしい」


「いやいやいや!それこそ有り得ないでしょ!魔獣の王と戦える魔獣なんて、それこそ魔獣の祖の血を浴びてないと成れないでしょ!」


教主の話を聞いたセイは、慌てた様子で、教主の強さを否定した


「儂もそんな魔獣は居ないと思うが、一応魔獣教と教主の話しは、他の魔獣の王達に話しておく必要がある…セイ、魔獣の王の中に教主が居る可能性もある、注意しておくんじゃぞぉ」


冥王は、真剣な表情でセイを見て注意した


「多分居ないと思うけど、一応注意しておくよ」


冥王の真剣な表情に、セイも真剣な表情で答えた



その後、レイをマーサに預け、冥王とセイは、1日中模擬戦をし続けた




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