第165話 パーティー当日



パーティー当日の夕方、セイは全身を黒い布で包んだ姿で、宰相宅の庭から王宮を見ていた


「そろそろだな…」


「セイ様、ご武運を」


「ぐぅ~…ぐぅ~…ぐぅ~」


「ああ、行ってくる【魔装】」


セイの横には、見送りに来たダグラと、一晩中準備の為に動き続け寝ているクロスがいた



セイは弱めの【魔装】を使い、人に気付かれないよう道を使わず、屋敷の屋根や庭を使い、宰相宅から王宮までを走り始めた


向かう途中、屋敷の者が居た時は、木に隠れたり、【魔脚】を使い、人に見られないように移動した



※ 【魔脚】とは、【魔技】の中の蹴り技だが、今回セイは走っている途中に地面を力強く蹴る為に使った



誰にもバレず、王宮を囲む城壁の前に着くことが出来たセイは、見回りの兵士に見つからない様、近くの木に登り、城壁を見ていた


「(クロスの調べだと、この位置から城壁を登ると、使用人の宿舎に入れるはず…見回りが来る前にっ!)」


セイは、周りに誰も居ないことを確認してから、【魔脚】と【魔足】を同時に使い、一気に城壁を登った



「(王宮の広間がパーティー会場だから…っ!あそこから入るか!)」


城壁を登ったセイは、【魔脚】と【魔足】を解き、【魔装】を使い、視力を強化しながら、侵入経路を探した


直ぐに侵入経路を見つけたセイは、もう一度【魔脚】と【魔足】を使い、誰にも見つからない速度で、王宮のバルコニーまで進み、人に見つからない様、静かに王宮内に侵入した



「(よし、入れたな…後は気配を消して、パーティー会場に潜入するだけだ)」


王宮に侵入したセイは、人に気付かられる可能性ある【魔技】を解き、気配を消してから、動き始めた




セイが王宮に侵入している頃、王宮の門を通り、公爵家の者達を乗せた馬車が王宮に到着した


それを見ていた人類至上主義の貴族達は、公爵家が全員揃っている事に疑問を感じ、同じ考えの者達と話していた



「おい!どうなっておる!何故公爵家が全員揃っているのだ!」


「まさか、王妃の命を狙った事がバレているのか?」


「いや、バレてはいないはずだ!あの刺客達と我らの繋がりは、調べても解らない様にしてある!」


「だが、公爵家が全員揃っているのは、少し不味くないか?」


「うむ、今回のパーティーでは、一応大人しくしていた方が良いだろう」


「そうだな…」


人類至上主義の貴族達は、公爵達に見つからない様、そそくさと王宮に入って行った



人類至上主義の貴族が話している時、人類至上主義を嫌っている貴族達も、公爵家が全員揃っているのを不安に思い、仲の良い貴族と話し合っていた


「まさか、公爵家が全員で来るとは…」


「公爵様達は絶対に揃ってパーティーに出ることはしなかった筈だ、それが揃ってパーティーに来たのだ、私は嫌な予感がする」


「うむ、この度のパーティーは、無事で終わらぬかもしれんな」


「そうじゃな、この度のパーティー、下手すれば内乱に発展する可能性があるのぉ」


「「「「「っ!」」」」」


その場に居た、1番年長の貴族の言葉に、周りに居た貴族は、一斉に顔色が悪くなった


「お主達は、何が起きても直ぐ動けるよう、パーティーの間は、公爵家と王家に注意しておくと良いぞ」


「そうですな、この度のパーティー、何が起きても不思議じゃありません」


人類至上主義を嫌う貴族達は、まるで戦場に行くかのように、覚悟を決めて王宮に入って行った



公爵達は、その様子を馬車の中から見ていた


~ディカン家~


「ふっ、アナベル、アルフェス見てみろ、人類至上主義などと、ふざけたことを言っている者達が、慌てて王宮に入って行くぞ」


「公爵家が揃うだけで、みっともなく慌ててる…そんなに私達からの報復が怖いですかね?」


「ふふ、それは怖いでしょ、彼らは裏でしか動かないから、表に引っ張り出されるのを、何より恐れているのよ」


「なら、表に引っ張り出してあげないと」


「そうだな、今日にでも引っ張り出してやろう」


「ふふ、そうね」


ディカン家の3人は、人類至上主義の貴族を、獲物を見る目で見ながら話していた



~ローパ家~


「デニス、お前役割は分かっているな?」


「分かってるよ、俺は人類至上主義を嫌う貴族を護ればいいんでしょ?」


「そうだ、人類至上主義を嫌う貴族の殆どは、この国には必要な人材だ、くれぐれも護り損ねるなどないようにな」


「そんなに言われなくとも分かってるよ、いざとなったら【魔技】を使って護るから安心してくれ」


「では頼んだぞ」


ディランとデニスは、人類至上主義を嫌う貴族を見ながら、明日からの国について考えていた


リルカサ家、トルティ家の4人も、人類至上主義の貴族と、人類至上主義を嫌う貴族見て、似た様な事を親子で話していた







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