第157話 アティア リルカサ



~アナベル~



「あら、この紅茶美味しいわね」


「そうでしょ、最近お気に入りの紅茶なの」


「ふふ、アティアが選ぶ紅茶は、いつも美味しいから、毎回お茶会が楽しみなの」


「そう言ってくれるのはアナベルだけよ、私の娘のアルカなんて、お茶会より鍛錬ばかりして、全くお茶会に出てくれないのよ」


「仕方ないでしょ、早く【魔技】を習得慕いのです」


「はぁ、いつもそう言って逃げるんだから」


アルフェスとヒサカが、公爵当主達に手紙を渡し、王都に向けて準備をしている頃、アナベルは、リルカサ家の庭でお茶会をしていた


「逃げてなどいません、ただお茶会をするより、鍛錬の方が大事だと言っているだけです」


「でも、アルカはまだ、【魔技】の【魔装】しか、習得出来てないじゃない」


「うっ、それは…」


「いつになったら、【魔威】を習得するのかしら?」


「くっ、近い内に必ず習得しますよ!」


「そうなの?楽しみにしておくわ」


「むぅ~ムカつく!」


「ふふ、アティアとアルカは、いつ来ても仲が良いわね」


アティアの煽る様な言葉に、アルカが反論出来ずに居ると、それを見ていたアナベルは、2人の仲の良さに笑っていた



「そうかしら?アナベルだってヒサカちゃんと仲良いでしょ?」


「そうですよ、ヒサカとアナベル叔母様は、いつも仲が良いではないですか」


「それは、ヒサカが王妃に成る前までよ、ヒサカが王妃に成ってからは、ちゃんと話して無いわ」


「あら、そうなの?」


「パーティーなどでは、よく話していると思っていたのですが」


「それは、不仲に思われない様に、話しているだけよ、実際は、何処か壁を作って話しているわね」


「…それってやっぱり、ヒサカちゃんが掟を破ったからなの?」


アナベルの話を聞いた、アティアとアルカは、少し驚きながらも理由を聞いた



「…それも有るけど、1番の理由はヒサカが相談も無しに王妃に成った事ね」


「っ、そうなの!てっきりアナベルは、最初から知っていのかと思っていたわ!」


「知っていたなら、絶対に反対したわよ…誰があんな腐った王家に、娘を嫁に出そうと思うのよ」


「それもそうですね、私もヒサカが王妃に成ると聞いた時は、よくアナベル叔母様が許可を出したと思いましたので」


「私もよ、アナベルなら、絶対に反対すると思っていたのに、ヒサカちゃんが王妃成ると聞いて、ビックリしたもの」


アティアとアルカは、アナベルとヒサカの不仲の理由と、ヒサカがアナベルに無断で王妃に成った事に、驚きを隠せずにいた



「…やっぱり皆、私が許可を出したと思うわよね」


「ええ、だってディカン家の最終決定権を握っているのはアナベルでしょ?」


「そうなのですか!てっきりヒナイト叔父様が決定権を持っているかと」


「ふふ、ヒナイトだと間違える事があるから、結婚してからは、私が最終決定をしていたの」


「確かプロポーズの言葉が『アナベル、私と結婚して、ディカン家の最終決定権を握ってほしい』だったわよね?」


「えっ!そんなプロポーズだったのですか!?」


「ふふ、そうよ、思い込みが激しい自分だと、最終決定は出来ないから、是非妻と成って最終決定をして欲しいって言ってきたのよ」


「…初めて知りました、アナベル叔母様も、よくそんなプロポーズで結婚しましたね」


「ふふ、それが少し違うのよ、アナベルはプロポーズを断ってるのよ」


「えっ、でも…」


「プロポーズされた時に、『最終決定をする為だけに、私は結婚したくないから断るわ』って言って断ったら、ヒナイトは間違えたと気づいて、『ごめん!違うんだ!アナベル!愛している!結婚してくれ』って、泣いて言ってきたから結婚したのよ」


「ヒナイト叔父様…」


「ふふ、ヒナイトらしいわよね、普段は貴族の当主として、しっかりやれるのに、大事な時はいつも間違える」


「そうね、でもそんな一面が有るから、ヒナイトと結婚したんでしょ?」


「ええ、見ていて飽きなもの」


「もしかして2人って…」


「ふふ、そうよ、アルカは、アナベルとヒナイトに、しっかり者の印象を持ってたみたいだけど、実際は慌てん坊のヒナイトと、それを見て笑っているアナベル、それが本来の2人よ」


「…知りたく無かったです」



アルカは、ヒナイトとアナベルの馴れ初めを聞いて、今まで思っていた2人の印象と違う事に戸惑いを隠せずにいた




もう1話続きます

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