第150話 王都の住人



王都に入る事が出来たセイは、クロスの案内で宰相宅に向かっていた。道中街の住人達を観察していたセイは、気になった事を小声でクロスに聞いた


         (小声)

「なぁ?何で王都の住人は、元気が無いんだ?」


「それは…」


「それに、殆どの住人達が着ている服も古着だし、王都の住人にしては可怪しくないか?」


「セイさんが言いたいことは分かるぜ、王都なのに、全く栄えて無いって言いたいんだろ?」


「ああ、その通りだ、全体的にスラム一歩手前みたいな雰囲気を感じる」


「それは王家と貴族が原因だ」


「王家と貴族が?」


「ああ、この王都の税が幾らか知ってるか?収入の8割を税として巻き上げるんだぜ?」


「っ!8割もか!?」


「そんだけ取られたら生きていくだけで精一杯になるだろ?」


「ああ、8割も取られてたんじゃ、かなり稼がなくちゃ、普通の生活は出来ないだろ」


「だから、王都の住人は犯罪まがいの事をする人が多いんだ」


「なるほどな、だから皆、警戒心がかなり強いんだな」


「そういう事だ」


「だが、そこまで税を取られるなら、王都から出て行けばいいだろ?」


「それが無理なんだ」


「どうしてだ?」


「王都の人間は、他の街の人間から、凄い嫌われてるからな」


「嫌われてる?どうしてだ?」


「昔まだ王都が栄えていた時代、王都の人達は、他の街の人達を見下し蔑んでいたんだ、それが今でも嫌われる原因になっている」


「それってどんだけ前の話だよ」


「確か、400年前ぐらいか?」


「はぁ?400年前の話を今も恨んでいんのかよ、俺からしたら、王都の住人も他の街の住人も同じに感じるけどな」


「それは俺も感じてるよ、だけどこの国では、それが当たり前那になってるんだよ」


「くだらねぇな、見下し蔑まれたからって、同じ様に見下し蔑んだら、自分達も同じクズだって事に気が付かないかね」


「同じクズだから気が付かないんだろ、俺も始めて王都に来た時は、王都の住人は人を蔑む者達だと思っていたからな」


「そうなのか?」


「ああ、宰相に言われて気づいたんだ、俺も同じ事をしているとな」


「へぇ~、その話を聞く限り、宰相はまともな人だって分かるな」


「ああ、俺の自慢の上司だった人だからな…おっ!着いたぞ」


「結構でかいな、周りの家の何倍あるんだよ」


クロスの案内で着いた屋敷は、周りの家の5倍近くあり、セイは周りの家を見ながら、宰相宅の大きさに驚いた



「クロス様!クロス様ですよね!」


「ん?知り合いか?」


「ああ、宰相宅の執事をしているダグラだ」


セイとクロスが宰相宅の前に居ると、執事のダグラが、屋敷の中からクロス目掛けて走って来た


「クロス様!お待ちしていましたよ!さぁ中へ!」


「ん?お待ちしていた?どういう事だダグラ?」


「あれ?聞いてないのですか?クロス様があのクソ野郎にハメられて、お仕事をお辞めになった時、宰相様が屋敷に来るように伝えたと聞かされていましたけど」


「えっ…」


「クロスお前、まさか忘れてたんじゃないよな?」


ギクッ「そ、そんな、そんなことないぞ」


((絶対に忘れてたな))


クロスは額から汗を流しながら、セイの言葉を否定した


そんなクロスを横目に、執事のダグラは、クロスと共に居るセイの事が気になり、何者かを聞いた


「あの~?貴方様は?」


「俺か?」


「はい」


「俺はハンターのセイだ、クロスの馬鹿に襲われた者だ」


「クロス様に襲われた!?どういう事ですか!?」


「クロスの馬鹿は、食うことに困って山賊をやろうとしてたんだよ」


「ちょ!セイさん!」「はい!?」


「その最初の獲物が俺だったんだが、弱すぎて返り討ちにしてやった」


「セイさん!なんで言うんだよ!」


「クロス様!」


「は、はい!」


「貴方様って方は、どうしていつもいつも馬鹿な事をするんですか!」


「す、すみません!」


「そこに座りなさい!」


「は、はい!」


セイの話を聞いたダグラは、その場クロスを正座させ、説教をし始めた。

セイが何度か止めようと試みても止まることがなく、3時間の間クロスを、門の前で説教し続けた


「勘弁してくれ~!」


「黙りなさい!今日という日は許しません!」


「そんな~」


(クロス…御愁傷様)



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