第149話 クロスへの懸念


「クロス!止まれ!!」


「うわぁぁぁぁぁぁ」


「止まれって言ってるだろ!」


ゴン「痛い!」


漏らした恥ずかしさの余り、走り出してしまったクロスを、セイは何度も声を掛けて止めようとしたが、一向に止まる気配が無かったので、セイは頭を殴って止めた


「はぁ、お前なぁ、その格好で王都に入るつもりか?」


「もう格好なんてどうでもいい、なんか俺、セイさんに会ってから、恥ばかり掻いてる気がする」


セイに殴られ止まったクロスは、そのまま膝を抱えて座り込んだ


「ん~確かにそうだな、山賊として襲ったら返り討ちに遭って、急ぐ為におんぶしたら吐いてしまって、宰相の話を勘違いして殺される覚悟を決めて、トドメに恐怖で漏らした。良いとこ無しだな」


「うっ、改めてセイさんの口から言われると、かなりの失態だらけしゃねぇか」


「まぁ、それはそうだが」


「なんで俺ばっかりが、恥かかなきゃいけねぇんだよ」


「(すげぇ落ち込んでるな、これなんて言って励ませばいいんだ?)えっと、まぁ、そういう運命だったと諦めるしかないな」


「ふざけるな!諦められるか!こんな屈辱を味わうぐらいだったら、死んでいた方がマシだった!うっ…うぅっ」


(げっ!マジか、泣かれたら、余計にどうすればいいか、分かんないんだけど)


クロスは、膝を抱えて座ったまま泣き始めてしまい、セイは、どうすればいいか分からず、少しウロウロしたが、結局クロスが泣き止むまで、見守る事しか出来なかった



「すまねぇ、もう大丈夫だ」


「っ!本当か?(こいつ、かなり情緒不安定だな、使える奴だと思ったけど、下手すれば足を引っ張る可能性があるな)」


泣き止んだクロスは、いきなり冷静になり、立ち上がりながらセイに謝った


いきなり冷静になったクロスを見たセイは、クロスが、精神的に可怪しくなっていると感じ、少しの不安を感じた


「ああ、もう大丈夫だ、さっさと服を洗って王都に行こうぜ」


「分かった、なら急ごう」


「おう!」


(やっぱりクロスは、何処か精神が壊れてるな…)



クロスとセイは、近くの川に向かった。川に着くなり、クロスは服を全部脱ぎ洗い始めた。クロスが服を洗っている間、セイは近くの木の下で、これからの事を考えていた



(クロスを作戦に入れるのは、止めといた方がいいだろが、ヒナイト達が王都に来るまでに、王家の力を出来るだけ減らすには、宰相に会うのは絶対に必要な事だし、その為には、クロスが居ると居ないじゃ、難易度がかなり変わるんだよね)


「マジでどうしよう…」


「おーい!セイさん!」


セイが悩んでいると、服を洗い終わったクロスが、濡れた服を来て、セイの下までやって来た


「服を洗うのは終わったか?」


「ああ!洗い終わったぞ!」


「なら、さっさと王都に向うか」


「おう!分かった!」



セイとクロスは王都に続く道に戻り、王都に向かって歩き始めた。暫くすると、王都の門前の列に並ぶことが出来、余り並んでいる人が少なかった為、セイとクロスは直ぐに門番に呼ばれた。


「次!来い!」


「呼ばれたな」


門番に呼ばれたセイとクロスは、門番の下に向かった


「身分証を見せろ」


「「はい」」


「どれ・・・・お前、他国から何をしに来たんだ?」


「俺は世界中を旅しているハンターだ、この国に来たから、一応王都にも行こうと思ってな」


「なるほど、なら元文官のお前は、何をしに王都に来た?」


「文官時代の友人に会いに来た」


「ふむ…では最後に、何故他国のハンターと元文官が一緒にいる?」


「それは、この元文官のクロスが、腹をすかせて倒れていたのを見つけた俺が助けたからだ」


「そうなのか?」


「ああ、飯を奢ってもらった代わりに、王都を案内しようかと思って、一緒に来たんだよ」


「なるほどな、よし、王都に入るのを許可する」


「「ありがとう」」


セイとクロスは、門番に少し怪しまれながらも、王都に入る事に成功した








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