第146話 クロスに説明



クロスにトーカス王国を滅ぼす手伝いをさせることにしたセイは、痩せこけたクロスの為に、近くの森で野鳥と果物を採りに行き、クロスに食べさせた


「ほら、まずは果物を食っとけ」


「おっ!ありがてぇ、リンゴとオレンジじゃねぇか、久々に食うぜ」


「お前はまず栄養を摂らなきゃ、王都まで歩けないからな」


「うぐっ、王都まで歩くのか!」


「当たり前だろ、馬も馬車もないんだから」


「マジか…」


「まぁ、果物と肉を食えば、王都までなら歩けるだろ」


「はぁ、すげぇ人使いが荒い人に付いて行くことにしちまったな」


セイは、クロスと話している間も、野鳥の解体をしていた



「さて、野鳥の解体も終わったし、後は焼くだけだな」


「焼くって言ったって、火はどうするんだ?」


「こうするんだよ【火斬】」


「っ!それって魔法か!?」


セイは、最小限の【火斬】を、薪に向かって放ち火をつけた


「ああ、俺は魔法師だからな」


「そういえば、名前を名乗った時に、セイ フォン ハーデスって言ってたな。フォンが付くってことは、まさか王族なのか?」


「お前、文官のくせに、気付いてなかったのか?」


「いや、あの時は、名前より俺をハメたクソ野郎に、復讐出来る話の方に集中してたから」


「はぁ、まぁいい。それより肉に串を刺すのを手伝えよ」


「分かった」



クロスは、串を刺した肉を焼きながら、セイについて、聞き始めた


「それで、ハーデスなんて王家聞いたことないが、何処の国なんだ?」


「ん~まぁ教えてもいいか。ハーデスは遥か昔に滅んだ国だ」


「遥か昔?それっていつ頃だ?」


「詳しくは知らないけど、一万年以上前だな」


「はぁ?一万年以上ってあり得ねぇだろ」


「どうしてそう思うんだ?」


「だって、世界でも1番太古の国って言われるトーカスですら2千年前だぞ!それより前の国の王家が生きてる方が可笑しいだろ!」


「そうか?魔獣の祖に滅ぼされた国なんだから、王家が残っていても可怪しくは無いだろ」


「はぁ?魔獣の祖ってなんだよ!」


「何だ知らないのか、なら教えてやるよ」


セイは、自身が知る魔獣についてのことを、クロスに話した


「嘘だろ…そんな話聞いたことねぇよ。魔獣達が元人で、魔獣の王達が魔獣の祖に傷を付けた者達だったなんて」


「事実だぞ、ついでに言っておくが、冥王様が治めていた国がハーデス王国だ」


「なら、セイさんって冥王様の子孫なのか?」


「そうだぞ」


「あり得ねぇ、なんでそんな人がトーカスを滅ぼそうとしてるんだよ」


「それはだな、この国の公爵家と王家が、ハーデス王国の貴族の子孫だからだ」


「なっ!」


「まぁ、王家は違うと思っているけどな」


「どうしてだ?」


「人類至上主義なんて、本当にハーデスの貴族なら考えないからだ」


「そんな事は言い切れないだろ。歴史が長いんだ、子孫が腐っても可怪しくは無いだろ」


「いや、ディカン家で話を聞いた限り、トーカス王家にも、ハーデスの頃からの記録がある筈なんだ、それがある限り、人類至上主義なんて考えが生まれないはずだ」


「つまり、トーカス王家には、ハーデス王国の頃の記録が無いって事か?」


「そうだ、ディカン家や他の公爵家も、そう考えてる。自分達を騙しているんじゃないかってな」


「なるほどな、だから公爵家は王家と反りが合ってないんだな」


「公爵家は未だにハーデス家に忠誠を誓っているから、余計にトーカス家に腹を立てているんだろ」


「それでセイさんは、トーカス家を滅ぼすことにしたのか」


「当たり前だろ、もし家臣を見捨てたなんて冥王様に知られてみろ、冥王様にどんな仕打ちをされると思ってるだ」


「うっ、考えるだけでも恐ろしいな」


「だろ?それにもし俺が失敗なんてしたら、この国は冥王様直々に滅ぼされる事になるんだぞ?」


「うわ~絶対に悲惨な末路を辿ることになるじゃねぇか」


「だから、クロス、絶対に成功させるしか民を護る方法はないんだぞ!」


「そんなプレッシャーを俺に掛けるなよ!こっちは平民出身の、ただの文官なんだぞ!」


「はは、冗談だ、絶対に失敗なんてしないから安心しろ」


「いや、その絶対的な自信は何処から来るんだよ」


「俺の圧倒的な強さから?」


「はぁ、俺、選択を間違えたか?」


「俺は、選択を間違えてないと思うぞ、俺と一緒に王家を滅ぼすだけで、残りの人生が安泰になるんだからな」


「はぁ、やるしか無いのか」


「おっ!焼けたな!どれどれ…うん、美味いな」


「あっ!俺の肉!」


セイとクロスは、肉の取り合いをしながら食べ、そのまま野営して一晩過ごした。




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