第107話 魔草



~マーサ~


グロリアとグリモアに連れられ、マーサは診察室に着いた


「さぁ、そこに仰向けになってくれ」


「はい」


グリモアは、マーサをベットに寝かせると、マーサのお腹に薬を塗り、その上から触りながら診察をし始めた


「あの~この薬はなんですか?」


「なんだい、知らないのかい?」


「はい、知りません」


「この薬は、「コンコン」ん?誰だい?」


「セバスです、セナ様が診察を見たいと、おっしゃったので連れてまいりました」


「仕方ないね、入りな」


「「「失礼します」」」


薬の説明をしようとしていた時、セバスがセナとマイカ、サラを連れ診察室にやって来た


グロリアの許可をとり、3人は診察室に入り、マーサの近くに並んだ


「今は何をしているのですか?」


「ちょうど、薬の説明をし始めたところだよ」


「薬?診察に薬を使うの?」


「何いってんだい?妊婦の診察はこの薬を使うのが当たり前だよ」


「聞いた事がないわね」


「セナ様がいた国は、どうなってんだい、昔からこの薬を使って診察するのは、常識だよ」


「そうなんですか?」


「誰も知らないですよ?」


「はぁ?何言ってだい、そんなわけないだろ」


「…多分、人の国では製法が忘れられてるかも」


「っ!まさか、子供の性別も分かんないのかい?」


「「「「はい」」」」


「…はぁ、いいかい良くお聞き、この薬は〈魔素薬〉の1種で〈内視薬〉って薬だよ」


「「「「〈魔素薬〉?」」」」


「はぁ、それも知らないのかい」


「はい、〈魔素薬〉ってなんですか?」


「〈魔素薬〉は、魔草を使った薬の名前だよ」


「魔草?確か、昔に絶滅した植物が、そんな名前だった気が」


「絶滅!何言ってだい!今も魔物の領域に沢山咲いてるよ!」


「そうなの?私が読んだ本には、魔草だけがかかる病で絶滅したと書いてあったから、てっきりもう絶滅したものと」


「はぁ、確かに、そんな時代もあったけど、魔草が絶滅する事はないよ」


「どうしてですか?」


「魔草は、魔素がある限り、必ず新たに咲く植物だからだよ」


「「「「????」」」」


「本当に知らないんだね、魔草は植物が魔素を吸収し過ぎた時に、植物から種として生まれる、変わった植物なんだよ」


「では、例え滅びても、新たに魔草の種が、木や花から生まれると?」


「そうだよ、だから魔草が絶滅する事はないんだよ」


「では、人々は魔草が滅びたと思い、その知識を捨てたと…」


「「「「・・・・・・・・」」」」


「よし!診察終わりじゃ!ん?皆黙ってどうしたんじゃ?」


グリモアは、セナ達とグロリアが話している間に、マーサの診察を黙々とこなして終わらせた


「はぁ、それで子供の調子はどうだったんだい?」


「うむ、元気じゃったぞ、妊娠6ヶ月ってところかのぅ」


「本当!早く産まれるのが、楽しみね」


「…私が、後4ヶ月で母親に」


「あら、マーサちゃんは不安なの?」


「急に妊娠って言われて、どうすればいいか分からなくて」


「ふふ、大丈夫よ、前に言ったでしょ、子供が出来ていたら一緒に育てましょって」


「…セナ様」


「私も手伝うよ!」


「微力ながら私も」


「…サラ…マイカさん」


「皆で育てればいいんだから、不安に思うことはないのよ」


「でも、旅をしながらは無理ですよ、何処で育てればいいか」


「何言ってだい、マーサ様の子供は、ハーデス家の子供だよ、この城で育てるから、心配しなくても大丈夫だよ」


「そうじゃのぅ、マーサ様がこの城で育てるのを嫌がっても、坊が絶対に目の届く距離の場所でしか、子育ては許さんじゃろうしな」


「ふふ、マーサちゃん、旅なんてセイ1人に行かせればいいのよ、私達はこの城で、子供を育てましょ」


「…皆さん、よろしくお願いします」


「お「「「任せな!」さい!」て!」ください!」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る