第82話 ハーデス家の偉業





 会議室に入り、ルージュは理由を説明し始めた


「エルフはハーデス家に、返しても返しきれぬ恩があるの、だから全てのエルフはハーデス家だけは、敬愛し信頼しているのよ」


「エルフがそこまで言うなんて、ハーデス家ってそんなにすごいの?」


「ハーデス家は、最初の王族なの、世界で始めて国を作った一族なのよ」


「初めて聞いたわ」


「俺も初めてだな」


「遥か昔、魔獣の祖が、生まれるより、前の時代、エルフは絶滅の危機にあったのよ」


「えっ!そうなの?」


「エルフは、他種族から奴隷として狙われてたの」


「あり得ないわ、エルフは強い種族じゃない」


「でも、他の種族より成長が遅くて、出生率も少ないのよ」


「数の暴力だな」


「そう、徐々に追い詰められ、このままでは滅びると考えていた時、ハーデス王国に助けられたのよ」


「でも、なんでハーデス王国は、もっと早く助けなかったの?」


「当時、エルフが住んでいる森は、ハーデス王国から3カ国離れていたのよ」


「なら、どうやって助けに来たのよ」


「3カ国と戦争をして、3カ国とも滅ぼしたのよ」


「えっ…」


「だろうと思ったよ」


「エルフを助けるためだけに、3カ国と戦争し、数多くの犠牲者を出してまで、助けてくれたの」


「怪しいとは思わなかったの?」


「当時は、何故助けるのか、何が狙いなのか、凄く怪しんだらしいわ」


「なら、どうして信頼することになったの?」


「ハーデス家は、捕われ奴隷にされていた、数多くのエルフを解放した後に、森に返してくれたのよ」


「でも、敬愛するほどじゃないでしょ」


「その時に、ハーデス王家から私達エルフに、手紙が届いたのよ」


「手紙?内容は何だったの?」


「『この度は、我ら人間がエルフの皆様に、多大な御迷惑と、恐怖を与えてしまい、誠に申し訳ありませんでした


我らハーデス家は、国が続く限り、エルフの皆様を、他種族から護り続けることを、ここに誓わせてもらいます』」


「これが、手紙の内容だったわ、そして魔獣の祖に国が滅ぼされるまで、何千年も誓いを護り続けてくれたの」


「そんなにも、誓いを護ったのね」


「それだけじゃないわ、エルフが食糧難になった時も、流行り病で薬がなくなった時も、ずっと無償で助けてくれたの」


「すごい一族なのね」


「だから、ハーデス家の名前を穢す事は、絶対に許せないのよ!」


「それは、許せないわね」


「だから、俺もハーデス家なんだよ!」


「証拠はあるの!」


「この魔剣が…あれ?魔剣がない、やばい宿に置いてきた!」


「やはり嘘なのね!」


「…ハーデス家には、一族だと分かる首飾りがある!」


「よく知ってるわね!今持ってるのかしら?」


「今はない、だが母様が持っている!」


「なら、確かめることが出来ないじゃない!」


「だけど、冥王様がその首飾りは、一族の証と認めたぞ!」


「えっ…」


「なんで冥王様が出てくるのよ」


「マスターは、知ってるみたいだぞ」


「ルージュ、知っているのか?」


「…冥王様が認めた?…なら本当に…」


「ルージュ!聞いてるの!」


「本当に、冥王様が認めたのね?」


「当たり前だろ、でなきゃ、名乗ることを許されるはずないだろ」


「ルージュ、教えてちょうだい、何故冥王様が出てくるの?」


「…ハーデス家は、冥王様の血筋なの」


「そんな…なら魔獣の祖に滅ぼされたハーデス王国の国王が冥王様なの?」


「そうよ」


「だからこの街はエルフが多いのね」


「エルフは、今も冥王様の近くにいたいのよ、偉大な一族の王の下で…」


「なら、貴方がメイトのギルドマスターになったのも」


「私が、ここのギルドマスターになったのは、エルフの悲願を叶えたいからよ」


「エルフの悲願?」


「エルフは、もう一度ハーデス王国を建国させたいの」


「でも、魔獣に子孫は…」


「だから呪いが解けるのを近くで待っているの」


「だけど、この子がその一族なら」


「建国ができるわ」


「いや、俺は国王になる気ないぞ」


「ちょ!そこはなる気に、なるところでしょ!」


「俺は、世界を旅したいの、国王になったらできないだろ!」


「いいのよ、ハーデス家の一族が生きているなら、いずれ建国できるわ」


「でもエルフの悲願でしょ?」


「もう、1万年以上も待ったのよ、少しぐらい待てるわ」


「貴方がそう思うならいいわ」






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