第47.5話 ジョンの叫び



セイ達がギルドを出ていってから


「ジョン、お前が魔獣を恨んでるのは知っている、だが今の話を聞いてそれでも魔獣を皆殺しにしたいか?」


「俺は妹を魔獣に殺されてるんだぞ」


「…俺は魔獣と話したことがある」


「本当か!」


「ああ、ハンター時代にな」


「何で今まで言わなかった」


「お前が話を聞く気がないって分かっていたからだ」


「っだが!」


「俺が話した魔獣は、どこか優しげで、苦しんでいるように見えた」


「どういうことだ」


「今日セイの話を聞いて、分かったことがある」


「わかったこと?」


「前に魔獣と話した時、その魔獣は永遠ほどつまらない物はないって言っていた」


「それがどうした」


「魔獣は不老の存在なんだよ、永遠に生きている者達なんだよ」


「はぁ?意味がわかんねぇ」


「ギルドマスターになった時、魔獣の王の話を前任から聞かされた、ギルドの禁止事項は何千年前からある規則だってな」


「それは…」


「魔獣の王と人々の国が争っていた時、魔獣の王達から休戦の話が出たらしい、その時魔獣を討伐してはならない規則ができたってな」


「何で休戦なんか」


「休戦をしなくちゃ人々の国が滅びていたからだ、それを魔獣の王達が止めるために休戦を申し込んだ、それが正しい歴史だ」


「…つまり人々が滅びないように魔獣の王達が手を尽くしたと?」


「そうだ、そしてその以前から魔獣の王は存在している、セイが言っていた魔獣が元人ならその魔獣達も長く生きている」


「ならなんで俺の妹を…」


「多分その魔獣は死にたかったんだよ、人を襲った魔獣は討伐されるだろ」


「じゃぁ、自分を殺してもらうために、俺の妹を殺したと?」


「多分な…」


「くそっ…くそっ…くそっ!」


「なんでそんな話を俺にしたんだよ!そんな話を聞かられたら…」


「恨めなくなるか?」


「だってよ、魔獣は悪者じゃねぇんだろ、人を魔獣にしたやつが悪いんだろ、それなのに何千年も生き続けなきゃいけないんだろ」


「そうだ、魔獣達は被害者だ、だが人を襲えば悪人だ」


「俺には恨めねぇよ、だってよ前にエルフの知り合いが言ってたんだよ、エルフの寿命は1000年もあるせいで、800年も生きたエルフの殆どは自殺するってよ、魔獣達はその何倍も生きてるんだろ、俺は魔獣がどれほど苦しんでるのか理解もできねぇ」


「そうか…」



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