第8話 忍び寄る手

それから由貴がクラブの彼と付き合いだした。


その記念にどうしてもお願いってことで前の4人で飲むことになった。


倫花は先輩にまた変な心配を掛けたくなかったので、今回は何も知らせずに行くことにした。


どうせこのメンバーなら安心だけど、

最近先輩疑り深いし…



倫花がかけつくともう皆は集まっていた。


「ごめん遅くなって…。急にバイトが長引いちゃった」


「遅いよ~」


由貴が機嫌良さそうに酔っ払っている。


晃の横が空いていたのでそこに座り、倫花はカクテルを頼んだ。料理は一通りでそろっていて、倫花のお腹がぐぅとなった。



「何のバイトしてるの」


晃が尋ねた。だいぶお酒臭い。


「この裏通りのケーキ屋のバイト!ケーキもらえないけど超楽だよ」


「なんか倫花ちゃんにピッタリ」


「何それ」


「何それって、あはは…」


晃は倫花の頭を撫でた。


…前よりも距離感が近くなってる。

なんだろう、晃の瞳が熱い。


「ねぇ晃行ってみなよ!そこの制服超コスプレはいってんだよ」


由貴が横から楽しそうに口を挟む。


「へぇ…俺も行こかな」


由貴の彼氏の和也が言った。



「あんたはあたしがいるでしょ」


「へぇ…じゃあコスプレしてくれるんだ」


「その気になったらね」


由貴が幸せそうにじゃれているのを見て、倫花はとても満足していた。





「じゃあ、俺が倫花ちゃん送っていくから」


「えっ?!」


店を出てから晃が開口一番にそう言ったので、倫花は驚いて聞き返した。


「今日は気を遣ってやれよ」


晃がこそっと耳元でささやいて倫花はハッと気が付いた。


「うん!あたし晃君に送ってもらおうかな」


いつもより声を張ってしまって、由貴が心配そうに近寄ってきた。


「倫花いいよ、気を使わないで。あたしと帰ろ?」


「いいのいいの!ちょっと晃君と話したかったんだ」


「倫花?」


「あ、ただ先輩には何も言わないでね。今日のことまだ何も言ってないんだ」


「え…本当に大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫」


倫花は強いて2人を帰らせた。

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ペットと彼氏と三角関係 水色 @mizu-iro

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