第7話 先輩の不安
アパートに近づくと駐輪場で誰かが待っていた。
「倫花!」
聞いたことある声だ。
「先輩?」
こんな時間に先輩が現れるなんて思ってもなくて、倫花は何かあったのかと急いで先輩のもとに走っていった。
「先輩どしたの急に。来るなら電話してくれたら良かったのに…」
「いや、まぁ倫花に急に会いたくなって」
先輩は照れ笑いをした。
「最近…連絡少ないし元気してんのかて思って。あと…ほら、今日由貴に付き合うとか言ってただろ」
先輩はそう言ってすぐに顔を背けてしまった。
…そうだよね。知らない男の人と飲みに行くなんて、いくら伝えていたからといっても気になるよね。心配かけちゃったな…。
家に入るなり先輩は倫花の部屋を見渡した。
「あれ、あいつは?」
「あぁユキのこと?最近よく1人で散歩するの。なんか猫みたい」
「でも見つかったら保健所いきなんじゃないのか」
「そうなんだけど、自分で窓明けてでていくの。まぁだいたい朝にはちゃんと戻ってくるからいいんだけど、不良犬みたい」
「ふぅん…」
そこまで言うと先輩は腕を腰に回して、倫花をぎゅっと抱きしめた。
「あいつはいつもお前といるんだよな」
「もぉどしたの先輩」
先輩は倫花の頭を自分の胸にうずめさせた。
「…今日いい男いた?」
やっぱり先輩はこれが気になってるようだ。頬に感じる先輩の高鳴る鼓動から先輩の不安がひしひしと伝わってくる。
「もー何いってんの、そんなんじゃないってば。今日はただの付き合いだよ。先輩が一番なんだから」
安心させようと顔をあげようとしたけど、先輩はまだ顔を見られたくないのか、倫花をぎゅっと胸に押しつけた。
「浮気すんなよ?」
「……」
一瞬戸惑った。顔をうずめていたことで表情を見られずにすんでよかったと思った。
「倫花は俺のもんだから…」
ようやく先輩は力を緩めて倫花に微笑んで優しくキスをした。
先輩…。
あたしは先輩が一番好きだよ?あれは本当に夢だったんだから。もう、忘れなくちゃ…。
先輩の首に腕を回して、先輩のキスを積極的に受け入れた。先輩の視線がやけに熱く絡みつく。
倫花はそのまま先輩と一緒にベッドになだれ込んだ。いつもなら服を優しく脱がしてくれるのに、先輩はシワついたブラウスを捲り上げたまま、倫花の胸に強く吸い付く。
激しい舌の動きに気を取られているうちに、すぐにスカートが巻き上げられ、先輩の指先がショーツを越えて倫花の中に忍び込んだ。
「あっ…」
部屋に甘い音が響き渡り、快感が全身に行き渡っていく。
「倫花、腰あげて」
先輩の声に従って腰を浮かせると、ショーツだけ引き抜くように剥がされる。先輩もまた、ズボンを半分だけずらして用意を始めた。
「あ、待って…」
起きあがろうとする倫花の腕を押さえて、先輩は躊躇なく倫花の中を強く突き上げた。
「あぁっ…」
いつもと違う展開に倫花は僅かな不安を感じずにはいられなかった。
「先ぱ…、あぁ…っ」
責め立てるような激しいリズムに、反射的に高い声が身体の芯から漏れていく。
2人の影がベッドを乱れ打つ。先輩は強く倫花の腰を掴んで少しも動きを逃してくれなかった。
先輩の言いなりに腰が動く。
快感の持続は快楽を麻痺させる。
動きが弱まった合間に、倫花はそっと目を開いた。揺れる視界の中、先輩の眉間がグッと歪んだ。
「…んッ」
先輩がゆっくり腰を数回突き上げる。
「ぁあっ…、ぁあっ…」
「ハァ…ハァ…ハァ…」
先輩は事が終わるとすぐに無言でシャワーを浴びに行った。
先輩の後ろ姿を見つめながら、倫花はようやく不本意な快楽から解放された気がした。
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