第6話2 言えない秘密
倫花はいつもクラブは苦手だった。
爆音の中で人込みにあふれて過ごすひととき。ストレスだけがたまっていく気がしていた。反対に由貴は踊るのが好きで,今夜もDJ近くの人だかりの輪にとけこんでいた。
倫花はそれを遠目に、ピンク色のカクテルに浮かぶ氷をストローでかき回し、勢い良くでてくる炭酸の泡を見つめていた。
「踊らないの?」
さっき
「踊れないんです」
晃は眼を細めて笑った。芸大らしくクラブに合ったお洒落なファッションをしている。加えてイケメンだし、きっと女の子にもてるんだろうなと倫花は思った。
「あいつらいい感じだね」
「ほんとに。うまくいきそう」
2人が指を絡ませ合ってるのを倫花は見逃さなかった。由貴好みのワイルド系な彼に納得していた。
「倫花ちゃんは彼氏いるから前の合コンこなかったんでしょ?」
「はい。まぁ…」
「マンネリ化中だって聞いたんだけど」
「えぇっ!?」
カクテルが揺れてこぼれそうになった。
「そんなこと全くないですっ」
「なんだ残念。まぁ由貴ちゃんあの時酔って話してたからなぁ」
遠くではしゃぐ由貴を睨みつける。
…ったく由貴ってば何話したのよ。まさかHに餓えてるとか言ってないでしょうねぇ。
「えっそんなこと言ってたの」
帰りの電車の中で由貴はあわてていった。
「もう、由貴のおしゃべり」
「ごめん倫花ちゃぁん」
相当上機嫌に酔っ払った由貴が背中から抱きついてくる。
「晃が勝手にあたしの携帯の待ち受けで倫花見つけてそんな話になっただけだよ。倫花が可愛いからいけないんだよ~」
「もぉ~由貴の酔っ払い!ったく、上手くいかなかったらあたし許さないからね?」
「倫花好きぃ~」
「ったく由貴は酔うと調子いいんだから!」
ガタゴトと揺れる電車の中で、倫花は由貴の幸せそうな姿が嬉しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます