第6話 言えない秘密


数時間するとユキがベランダから入ってきた。


どうやら散歩に行ってたようだ。管理人に見つかったら家を追い出されるというのに倫花は怒る気にもなれなかった。


「ユキ…」


手を差し出すとクーンとユキがすり寄ってくる。ユキを撫でながら、倫花はようやく結論を出した。


…もう全てを忘れることにする。もうあの子に会うことなんかない。あっても絶対相手になんかしない。先輩と絶対に離れたくないから。



それでも倫花は罪悪感をかき消すことができなくて、しばらく自分から先輩に連絡することが出来なかった。先輩も相変わらず忙しいらしくちょうど良かった。あれから少年と会うこともなくて時間だけが平和に流れていた。






「男でもできたの?」


「なっ?!」


由貴の問いかけに、倫花は飲んだカプチーノを吹きだしそうになった。


「最近Hしたいとか言わなくなったよね」


さすが由貴するどい!!



「そ、そんなことないよ」


倫花急いでカプチーノを飲みあげる。甘党の倫花はどうも砂糖を入れすぎたようで、溶け切れなかった砂糖がのどにつかえた。



「なんか怪しいなぁ…」


「へ、変なこと言わないでよ!!あたしは先輩一筋なんだからね」


そう言いながら複雑な気持ちになる。


「まあね、この前のサークルの飲みでも、どれだけ男がよってきてもあしらってたもんね~。

いいねぇもてて。先輩もそんだけ思われたら幸せもんだよ」


由貴の言葉に倫花は心がぎゅっと絞られるようだった。



「あ、そうだ、ねぇ倫花!明後日クラブに付き合って?!」


「クラブぅ?」


「そっ!あたしもそろそろ幸せきそうなんだ♪前の合コン相手に気に入った人がいてさ~今度クラブいこってことになったの。で、友達連れていくから誰か呼んできてってさ」


「やだめんどくさい…」


「ちょっと、あんた1人だけ幸せになるつもり?大丈夫!相手にもあんたが彼氏いるって伝えてあるから」


「え~」


仕方ないから、倫花はしぶしぶ由貴に付き合うことにした。

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