第5話2 浮気の自覚
「…嘘つかないでよ!!」
倫花は思い切り少年の手を払いのけて叫んだ。
「嘘じゃないよ?」
少年は可愛い声を出す。
倫花はむしゃくしゃしてきた。
…だめだ、どうしても思い出せない。まっすぐ1人で帰宅して眠りについたと思ったのに。頭が痛くてちゃんと思い出せない。いったい何があったの!
「…あたしが誘ったの?」
そう言うと少年はニヤリとした。
「そんな感じかな」
さらに頭が痛くなる。
あたしなんてバカなこと…。し、信じらんない。こんな子供みたいな子誘っちゃって…。
これじゃ、犯罪じゃない!
「あたし彼氏いるの」
解決策をもとめてとっさに出た言葉がこれだった。少年はキョトンとして答えた。
「知ってるよ」
「し…知っててこんなことになったの?!」
「だって我慢できなかったし…」
少年は頭をかいた。
しんじらんない!!これだから子供は…!
「とりあえずなかったことにして」
「…なんで?」
「な、なんでって…当たり前でしょ!酔ってたの!!」
倫花は煮えくりかえる気持ちを押さえられなくて、少年に枕をなげつけた。
「…ったく倫花は短気だなぁ」
「倫花って呼ばないで!」
「あんなに寂しがってたくせに…」
「言わないで!!」
本当信じられない!
そんなにあたし餓えてたなんて!
「…どうしたいのよ」
終わりが見えない少年の説明に嫌気がさし、倫花はついに言いたくない言葉をだした。
…お金?
…体?
いったい君は何を望んでいるの?
どうしたら先輩との仲を壊さないでいられるの?
少年は倫花をまっすぐ見つめた。あまりにキレイな茶色い瞳に、思わず吸い込まれそうになった。少年は静かに答えた。
『倫花さん。
僕のことも愛して?』
「ーー何ばかなこといってんの!!」
倫花は怒りに任せて立ち上がり、少年の腕を引っ張った。
「い、痛いっ」
少年は子供みたいに顔をしかめる。
「もういい!もういいからとりあえず早く出てって!!」
「わ…わかったよ!!今日のところは帰るから…。だから倫花さん一つだけお願い」
「な、なによ…」
「なんか服貸して?」
倫花の眼球が大きくなる。
なんですと?!
なんでこの子全裸でうちんちきてんの?!
信じらんない!
頭おかしいんじゃないの?!
「変態!!」
倫花はそういって先輩の服をタンスから取出して少年に投げつけた。一刻も早く一人にしてほしくてたまらなかった。
少年はじゃっといってあっけなく帰っていった。急に訪れた静けさに、倫花は夢を見てたんじゃないかと錯覚する。
倫花はとりあえず目を閉じてみた。
…どうしても思い出せない。あたしあの子と浮気しちゃったんだろうか。体も全然覚えてない。でもあの子は裸だったし、あんなこと言ってたし。
とりあえず先輩に正直に言おうか?でも覚えてないなんかで済まされないし。どうしよう…。
誰を責めたらいいのかわからなくて倫花は泣きたくなった。
ひどい頭痛はまだ続いていた。
暑い日差しも続いていた。
あまりにショックが大きすぎたからだろうか。ユキがいなかったことに、倫花は少しも気付かなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます