第5話 浮気の自覚


ひどい頭痛で目が覚めた。


カーテンが半分空いていて、あまりにも眩しい光に眼を明けられなかった。


「今日は学校休もう…」


もう一度布団に潜り込んで狭いベットで寝返りをうつ。とても温かい人肌を感じた。



先輩…


倫花はその体に寄り添いながら、少しずつ脳を覚醒させていった。


あれ、先輩昨日大阪に出張だったよね…



二日酔いの耳鳴りはまだ消えなかった。



あたし…昨日鍵かけたよね


喉がカラカラに渇いて水を欲していた。



「……」



倫花は次第に何かがおかしいことに気付いた。髪をかきあげ横に寝る誰かに目をやる。



「――誰??!!」



自分の横に眠るのは見たこともない裸の少年だった。おそらく年下だと思った。


スッとした鼻だちで、アクのない整った顔をしている。女子高生達が騒ぐアイドルにいそうな感じだ。白く細い曲線を描いたキレイな上半身が、倫花に格別な不安を与える。



ちょっと?!

なんなのコレは!

何であたし家に男の子連れ込んでるの?!!


恐る恐る倫花は自分の体を見渡すとタンクトップ姿だった。


…判定ができない!



とりあえずそばに脱ぎ捨ててあったシャツを羽織る。その勢いで思わず目覚まし時計を倒してしまいその音で少年が目覚めた。


「ん…」


少年は目覚めると、倫花を見て微笑んでいる。倫花は一瞬それにたじろぎ、しかし勢いに任せて尋ねた。


「あなた誰?!」


少年はぎょっとして、自分の体をながめた。


「やっべ…」


「ねえ!あなた誰なの?なんであたしとこんなことになってんの」


少年は倫花の反応を見て何か考えている。


「ねえ!教えてよ!」


倫花は早く自分の惨事を知りたくてたまらなかった。


「覚えてないの?」


少年が真顔で見つめてきたので、倫花は急に恥ずかしくなって視線を逸らした。


「な、なんのことを??」


その言葉を聞くと少年はニヤっと笑って再びベッドに横になった。


「そうだよな~わかんないよな~」


少年は天井を眺めて組んだ足をふらつかせてにやけている。少年はまるで自分の家にいるみたいに倫花の部屋に馴染んでいた。


倫花は怒りたいのを我慢して少年の言葉を待つ。少年は斜め上を見上げて、今にも鼻唄を歌い出しそうに口を尖らせてるかと思えば、バッと勢いよく起き上がった。


「知りたい?」


少年は倫花を見て言った。


「も、も、もちろん」


倫花はどもってる自分に余計恥ずかしくなった。


…怖い。本当は怖い。

次の言葉が怖くてたまらない。


少年は優しく倫花の手に触れて言った。



「愛してほしいていったんだよ」


「えっ?」



「倫花が愛してほしいて言ったの」

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