第3話 I ♡先輩
「倫花~、腹減った」
「もぉ、先輩ったら家に入ってくるなり何それ」
「久しぶりに倫花のチャーハンが食べたいんだよ」
今日は久しぶりの家デート。久しぶりに会う先輩は社会にもまれてか、少しやつれて大人の色気をかもしだしていた。
「…寂しかったよとか言ってくれてもいいのに」
倫花が頬を膨らませると、先輩はやさしく微笑んで後ろから手を回した。
「寂しかったの?」
この後ろからギュッてのがすごく好き。先輩もそれを知ってか倫花の反応を確認して力を強めた。
「やっぱ先に倫花かな…」
「あ…」
久しぶりの先輩とのキス。正直あたしも待ちきれないよ…。
慣れた手つきで先輩は片手をあたしのうずいた体に忍ばせる。
「ぁん」
もう限界。
『ワンワンワンワンワン!!!』
「うわぁ、なんだよコレ!!」
先輩が勢いあまってソファーに倒れこんだ。
「ユキ!!こらっ!!吠えたらだめだって言ったでしょ!!!」
「倫花…お、お前」
先輩はひきつった顔で倫花に解説を求めている。
「あ、あの…実はね…」
ユキはまだおもいっきり先輩を睨み付けている。
ユキのことを一通り説明し終わると先輩はため息をついてユキをみた。まるで親に叱られた子供のように、倫花は膝を抱えて小さく座っていた。
「…だからってお前、なんでそんな単純なんだよ。そんな簡単に連れ込んで、バレたらお前が追い出されるぞ」
「でも保健所に連れていかれるなんて我慢できなかったんだもん」
「だからって…」
「それに…」
倫花は上目遣いで先輩を見る。
「それに?」
「…寂しかったんだもん」
近くに来たユキをギュッと抱きしめると、先輩は大きなため息をついた。
「…わかった、じゃあもしここ追い出されることになったら俺んちこいよ」
「…えっ?」
「なんか俺ら最近仕事ですれ違ってばっかだったし、そろそろかなって思ってたし。
…まぁ、俺も寂しいし」
先輩は少し照れくさそうにそっぽを向いた。
「先輩…ありがと!!」
気持ちのままに倫花は先輩に抱きついた。
「…じゃ、もう食べてもいい?」
先輩の瞳が熱い。
「うん…いいよ」
目を閉じて再び先輩とキスをした。
今度はユキは静かだった。吠えるとこの家に住めなくなることがようやくわかったようだ。
次第に先輩の舌の動きが激しくなる。
キスをしながら、先輩の指先が倫花の身体の線を丁寧に形取り、その行き先の知れない動きに倫花はドキドキしてたまらなくなる。
今までの会えなかった時間を埋めるような濃厚なキス。いつも以上に興奮している自分が隠せない。心臓の高鳴りは部屋に響く時計の音よりも何倍も早い。
唇を離していつものように先輩とベッドに向かった。先輩はいつものように優しく倫花の服を脱がしていく。倫花の身体が顕になると布団をかぶり込んで、先輩はそれを激しく求め続けた。布団の中にどんどん熱気がこもっていった。
愛しい愛撫に溺れながら、しだいに倫花は意識が遠退きだした。遠退く視界に茶色い目が光っていた。
まるで倫花の表情を何一つ見落とさないよう、ユキが微動だにせずこちらをみつめている。
「あぁ…!!」
幸せに身をゆだねながら、次第に遠退く景色の中で、倫花はついに我慢できずに甘い世界に堕ちてしまった。
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