幸運の独占は嫌だった。
餅戸
発見 報告 消滅
私たち二人は、同じ学校で割とよく遊ぶ女子グループだった。
学校は自然が多く裏山もありとても自由に動けた。
小学生の頃の私は、一人で外を駆け回るのが大好きな女の子だったから、スカートなんて履かず、男子のように動き回っていた。
それを見つけたのは偶然だった。
私が一人で学校の裏山をのんびり歩いていると、緑色の絨毯が広がっていた。
歩き疲れていた私はそのまま服が汚れるとか考えもせずに、絨毯に横になった。
しっとりと湿っていたが、柔らかくて、気持ちよかった。
真上には太陽が有り、暫く見つめて目に黒い影が焼き付いたことを確認してから、視線を緑色の植物に落とす。あぁ、これはたしかクローバーと呼ばれるものだよな。シロツメクサだっけ?白い花が咲くのかなぁ。
3つのが普通で、4つ以上だと幸運とか金運とか…あれ?この絨毯のクローバー、ほぼ全部4葉だ。もしかして、自分の記憶違いで4葉が普通のクローバーだったっけ?
でも、それならトランプカードのマークも4つのハズ……。
私は自分に自信が持てなくなってきた。だからクローバーを1つだけ千切り、走っていつも話している女の子に話しかけた。
「これって、普通のクローバーだっけ?」
「何言ってるの!?これ、レアなやつだよ!!って、何処にあったの?」
私は4葉のクローバーが幸運の象徴である事がわかればよかったので、素直に4葉のクローバーの群生地に案内した。
「うわぁ……すごいねぇ」
「横になると気持ちよかったよ!」
「そうじゃなくて!!」
彼女が何に怒っているのか、感動しているのかいまいちわからなかった。
読書が好きで、知識は有る賢い子だが、彼女は植物はそんなに好きではないはず。
「これだけの幸せがあるんだから、沢山幸せになれるよ!この場所、他の子には教えないでね?」
内心、なんでこの子が仕切っているんだと思いながらもこの空間に人がたくさん来て寝れなくなるのは嫌だったから私は頷いた。
一週間後再びその緑の絨毯で寝ようと向かったら、地面の土と雑草だけが見えた。
クローバーだけが全て根引っこ抜かれていた。
場所を教えた子に聞いてみたら、
「だって枯れたら嫌だし、もっと増やしたいでしょ?他の子とも協力しても結構時間かかっちゃった。」
と悪びれもせずに言ってきたので、私は少し嫌な気分になった。
そういう幸福は自力で作ったり人から教わるものではなく、偶然自力で見つけるから幸せな気分になるのではないかと私は思ったから、何も言わずにその子から離れた。
あの日以降あの子とは2度と会話をしていない。
親が仲良かったのでどうしたのか聞いてきたが、私は何も言わなかった。
考え方が違いすぎる人と一緒に居ても疲れるだけと、小学1年生の私は学んだ。
幸運の独占は嫌だった。 餅戸 @mochod
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