三頭犬、食い扶持を稼ぐ 6
「なに?」
先輩はあたしのことを、怪しげなものでも見るような目で見ていた。。
「あはは」
自分でも急になに言ってんだろって思ってはいる。
けど、もう言っちゃったから。
「あのあたし、その子たちを養うために、お金が必要なんです」
あたしの目の先には先輩に担がれた、まだなんとなくぐったりしてるみんな。
「だから、これから、お金を稼ぐ必要があって、それもバイトなんかじゃ、全然賄えないんです。それで、えっと」
勢いで始めちゃったから、まだまとまりきってない言葉をなんとか続けていく。
「続けろ」
「ありがとうございます。それで、今日みたいな依頼を受けたり、するんですけど、やっぱり最終目標は」
あたしはしっかりと、見据える。
「ダンジョンアタックを、してみたいと思っています」
もっと先とか欲しい未来とかを。
「それで」
「……ギルドメンバーを集めているのか」
「はい。けど、ぶっちゃけ先輩が、お声がけ、一人目、というか、他にあては一切ない、というか」
「呆れるな」
呆れられた。
なんなら目を細めて、露骨にため息まで吐かれそうだった。
「あの、それで―――」
「条件がある」
「え?」
「…………」
「条件、って?」
「魔石は知っているか」
魔石、確か、教科書で読んだ覚えがある。
「えっと、色んなことに使える、便利な、石、でしたっけ?」
「まあ、概ねはそんなところだ」
先輩は懐から革袋を取り出して、中身を掌に空ける。
「わぁ」
「これが、魔石だ。魔術の触媒として優秀であり、あらゆる分野の、とりわけ魔導科の連中が欲しがる品だ」
「奇麗」
それらは名前の印象とは違って、石っていうよりも色とりどりの結晶って感じの見た目だった。
「基本的にはダンジョンで手に入る。買うには、ある程度の伝手が必要で集めるのには苦労させられる。ダンジョンに潜るのであれば」
先輩は魔石を革袋に戻して、懐にしまった。
「報酬としてこいつを回して欲しい。それが可能であれば、お前の作るギルドに入ってもいい」
「大丈夫です。お願いします」
「……む」
「ダンジョンアタックの際、魔石が手に入ったら優先的にお渡しします」
「いいのか?」
「なにがです?」
「いや、こういうのは大抵、数日返事を待つとかそういう」
「関係ないです」
だって。
「お返事は決まってますので」
「……俺が無知な後輩に付け込んで、報酬を吹っかけてるとは考えないのか?」
「あは、そうだとしたら、あたし、もう詰んでますね」
「お前」
「けど」
うん、そうだ。
「あたし、自分の直感を信じることにしました」
「はぁ」
今度こそ、本当にため息を吐かれてしまった。
呆れられたのは、まあいいか。
「いいだろう」
けど。
「お前のギルドに入ってやる」
「はい。これから」
こうして、あたしの冒険者として初めてのお仕事が終わって。
「よろしくお願いします」
あたしの一人目の仲間が出来て。
てんやわんやの、あたしの冒険者としての生活が始まったんだ。
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