ドッグRun!Run!!Run!!! 6
遠い、遠い、記憶の彼方。
あの日交わした小さな約束。
『約束だよ!』
『ああ、約束だ』
繋がれたのは小指と小指。
交わされたのは指切りの約束。
繋がった、糸の色は。
桜の色。
香り立つ匂い。
それは、きっと。
「あ、れ?」
夢から覚めて目に入るのは。
なんだかんだで見慣れた天井に。
なんだかんだで嗅ぎ慣れたお茶の匂い。
「起きたかえ」
「お婆ちゃん、先生」
ってことは、ここ、医務室かな。
「あの、なんであたし、ここに?」
「生徒会の会長さんがねー、あんたをここまで運んでくれたんよ」
お婆ちゃん先生はいつも通りののほほんとした表情でお茶を口にしていた。
「あ」
そっか、あたし。
「決闘して、すっごい痛い思いして」
あれから、どうなったんだろう?
「心配せんでもいいよ」
お婆ちゃん先生がぐっと親指を立てた。
「治療も検査も、もう終わっとる。体にも魔力路にも特に異常はなかったよ。あんた見かけによらず頑丈さね」
有能だ。
あたしも褒められたっぽいのでとりあえず親指を立てて返しておく。
心なしかお婆ちゃん先生、嬉しそうにしてた。
「ああ、それと」
ついっと、お婆ちゃん先生がベットの脇を指し示す。
「その子達と引き離されることは、もうないみたいさね」
言われて、目を向けた先。
「……そっか」
そこには、丸まって眠る、紅い子犬君達の姿が。
「夢じゃ」
そっと、今回の功労者であるみんなを抱き上げる。
「なかったんだ」
みんながあたしを助けてくれたこと。
それと。
「あ、シズク」
「目を覚ましたのであるか」
「……よかった」
「あは」
みんなと、お喋りできること。
「みんなー!!」
むぎゅッとさらに強く抱きしめる。
「ありがとう。あたしのこと、守ってくれたんだね」
「当然のことである」
「それに、お話しできるの、凄く嬉しい」
「うん。やっと」
「……話ができる」
決闘の結果はあれだけど、あたしが自分で勝ち取った訳じゃ無かったけど。
あたしがこの子たちと引き離されることは、もうないんだって。
なら、ならさ。
「これから、よろしく!」
「うむ!」
「……(コクリ)」
「うん」
あたしは、守られたけど。弱い子のままだったけど。
これからもみんなと一緒にいられるんだ。
今は、今だけは、それでいいって。
そういうことにしようと思った。
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